2021 Fiscal Year Research-status Report
FDMLによるタイムストレッチ分光用広帯域中赤外光源の開発
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21K20500
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 卓磨 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (40906252)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | モード同期レーザー / 中赤外光源 / 分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
中赤外光源の開発において6um以上の領域は分子の遷移が最も豊かであるため、特に重要とされている。しかし、この領域において広帯域に直接発振できるゲイン媒質はないため、近赤外からの波長変換に頼ることになる。本研究では将来の高速赤外吸収分光応用を見据えた広帯域中赤外光源の開発を目指すものである。当初の計画では、フーリエドメインモード同期レーザー(FDML)を用いる予定であった。だたし、掃引速度が数100kHz程度に制限され、また掃引のジッターが分光スペクトルの取得の際、悪影響を及ぼす可能性があった。したがって、本研究では、モード同期レーザーベースの光源開発にシフトした。 一般的なYbファイバーモード同期レーザーにシングルモードファイバー中でのスペクトル拡大と分散補償を行う独自のテクニックを加え、12 fs, 3.3 Wという他にあまり類を見ない光源を作製する事ができた。これを1 um帯から中赤外へ波長変換する際に最も有力な選択肢の一つであるOP-GaP(orientation-patterned Gallium phosphide)結晶に集光する事で、単一のパルス内で差周波を発生させ、mWレベルの広帯域な中赤外光(8-12 um)を得ることが出来た。これは1 um帯のファイバーベースでの広帯域差周波発生を世界で初めて実現した例であり、OPTICAのOptics Lettersに掲載された(T. Nakamura, et al., Opt. Lett. 47, 1790 (2022).)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はFDMLを用いた光源開発を行う予定であったが、検討をより深く進めていった段階で、これから取り組むのは得策ではないと判断し、別の方法で中赤外光源を開発するに至った。関連の論文も出版されたことから、研究そのものは順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は作製した光源での超高速赤外吸収分光への応用の他に、可視、近赤外領域で行う超高速ラマン分光への発展を考えている。特に本研究で開発した12fsYbファイバーレーザーは上記応用に適しており、光源に独自性がある事や、我々の研究室で開発している超高速分光のテクニックと組み合わせることで、従来のスペクトル取得時間やS/Nを2桁以上改善しうるものなるのではないかと試算している。
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