2021 Fiscal Year Research-status Report
SiCにおける電気的スピン注入に基いた局在スピン制御の開拓
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21K20502
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森岡 直也 京都大学, 化学研究所, 助教 (90905952)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 炭化ケイ素 / SiC / スピン注入 / 点欠陥スピン / 核スピン / 半導体 / スピントロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、半導体としてのSiCの機能と、量子ビット・量子センサとして期待される局在スピンのホスト材料としてのSiCそれぞれの融合による新たなスピントロニクス機能の創出を目指し、その第一ステップとしてSiCへの電気的なスピン注入による伝導電子偏極の実現と、伝導電子スピンと局在スピンとの相互作用を介した局在スピンの制御の可能性を探る。 本年度は、4H-SiC中への電気的スピン注入を実現するために必要となるナノデバイス加工プロセスの開発と実験系の構築を行った。また、模擬デバイスを作製して強磁性電極・SiC界面の電気特性評価を行った。具体的には、n型4H-SiCの表面の不純物濃度をイオン注入によりナノスケールで制御した後、スピン注入源となる強磁性電極を成膜し、電子線リソグラフィーおよびイオンミリング加工によって、最小幅が約300 nm細線電極を有する、横型スピンバルブ構造を模したデバイスを作製した。本デバイスの電極/SiCの界面抵抗を室温にて評価し、イオン注入を行った場合において電界放出電流モデルとよく一致する特性を得た。このことは、電気的スピン注入を実現するために必須となる直接トンネル輸送が実現できていることを示唆する。以上の検討に加えて、次年度に行うSiC中の局在スピン制御とその信号検出に向けて、点欠陥スピンや核スピンを光学的および電気的に検出する実験系の立ち上げを行い、Si空孔スピンの磁気共鳴信号の光学的・電気的検出に成功した。以上のことからSiCへの電気的スピン注入実験とその後の局在スピン制御の研究を行うための要素基盤を整えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験系の立ち上げ準備を行い、またイオン注入による界面制御とデバイスプロセス要素技術開発を行い、電気的スピン注入デバイスを模した構造のデバイスを作製した。研究計画時に予定のなかった実験室改修のために界面制御実験は計画回数を実施できていものの、電気的スピン注入の実現に必要となる直接トンネル輸送界面が実現できることを今年度中に明らかにすることができ、研究は概ね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、イオン注入および電極形成条件をより詳細に検討し、強磁性電極/SiC界面の更なる最適化を行う。トンネル現象における熱励起の影響を低減するため、電子輸送特性の解析を低温でも行うことで、強磁性電極とSiC界面の直接トンネル輸送を詳細に調べる。同時に、横型スピンバルブデバイスを作製し、掃引磁場中での非局所・局所磁気抵抗を評価することで電極界面とスピン輸送特性の関係を解析し、4H-SiCへの電気的スピン注入の実験的実証を目指す。これによって、SiC中でのスピン流物性の解明に取り組む。また、注入された伝導電子スピンと局在スピンとの相互作用を介した局在スピン制御の可能性について、スピン注入と局在スピン検出を組み合わせた実験や、電子状態計算による理論検討により研究を遂行する。
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Causes of Carryover |
スピン注入デバイス用のSiCエピタキシャル薄膜ウェハの調達が年度を跨いだこと、および研究計画時に予定のなかった実験室改修による一時的な実験中断に伴うイオン注入実施回数の減少により、次年度使用額が生じた。使用計画については、エピタキシャル薄膜ウェハおよびイオン注入等の実験費用に充てる予定である。
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