2022 Fiscal Year Annual Research Report
コヒーレントラマン分光と信号飽和を利用した観察対象を指定しない超解像顕微鏡の開発
Project/Area Number |
21K20505
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
桶谷 亮介 九州大学, 理学研究院, 助教 (00908890)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 光学顕微鏡 / 超解像観察 / ラベルフリー / コヒーレントラマン / 分光イメージング / CARS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高い空間分解能で、かつ試料の分子情報を無標識観察できる顕微分光装置の開発を目的としている。本年度は、まず、前年度に明らかとなった、コヒーレントアンチストークス散乱(CARS)スペクトル測定時に発生した、色収差問題の解決法を開発した。超解像イメージングを達成するためには、ベースとなる顕微鏡の空間分解能を最大まで引き上げる必要がある。本研究では照明対物レンズの開口数(NA)を有効に活用可能な光学系を構築してきた。NAの有効活用により、照明スポットが小さくなり、空間分解能の向上を達成した。しかし、照明スポットサイズが小さくなるのに伴い、色収差の問題が現れた。使用する白色光源が色ごとに異なる焦点面で集光してしまう事で、一部の波長でCARS光の励起ができない問題が発生した。結果として検出したCARSスペクトルの一部が欠損してしまった。この問題を解決するために、新たに色収差の補正法を開発した。照明対物レンズの瞳面で白色光の分布を空間変調することにより、色収差の補正を行った。これにより、NAを有効に活用しつつ、欠損のない広帯域CARSスペクトルを取得することに成功した。次に、CARSスペクトルの励起光強度依存性を測定した。結果より、CARS信号の飽和が分子の振動モードによって異なることを見出した。 研究期間全体として、観察後に試料内部の観察対象を指定できる超解像観察法を開発することを目的とした。目的の達成に向け、CARS信号とその飽和を用いた超解像顕微分光装置を開発し、照明系の最適化、信号飽和測定装置の導入、制御プログラムの構築を行なった。CARS信号の飽和が分子の振動モードによって異なることを見出した。また、予定外の成果として、上記色収差の補正方法の開発を達成した。これらの成果は無標識超解像分光イメージングの基盤技術となり得る。
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