2021 Fiscal Year Research-status Report
抗菌性生体材料の開発を目指した組織細胞およびバクテリアの付着予測モデル構築
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21K20511
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
梅津 将喜 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (30891387)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 生体材料 / 抗菌性 / タンパク質吸着 / 微生物付着 / 細胞接着 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、コロイド粒子の凝集/分散を表す代表的なモデルであるDLVO理論を応用して、生体材料に対するタンパク質およびバクテリア細胞の付着メカニズム解明に挑戦する。 本年度は酸化チタンに対する出芽酵母(真核生物)および大腸菌(原核生物)の付着特性の解明に着手した。酸化チタンは代表的なインプラント材料であり、表面の酸化処理によって骨芽細胞への親和性が変化することが知られている。また酸化チタンは光触媒活性を持ち紫外線照射によって表面親水性が向上することから、粗さなどの物理的な変化を伴わず表面性状を変化させることで、微生物やタンパク質との付着性を評価できるのではないかと考えた。その結果、無処理区と比較して陽極酸化処理を行った酸化チタン表面では出芽酵母および大腸菌の付着数が増加する傾向が見られた。一方、酸化チタン自体の表面自由エネルギーが非常に高く、各処理条件間での親水性に大きな差が見られなかったことから、各処理条件における付着性の違いをDLVO理論だけで評価するには課題があることが明らかになった。本年度の結果を参考に、酸化チタンに限定せず高分子材料やリン酸カルシウムなど幅広い生体材料を対象に、材料表面性状と微生物付着性の関係について調査を進める。 またタンパク質などの有機物吸着が材料表面性状に与える影響を評価するために、大腸菌培養用の培地に浸した酸化チタンの接触角を測定したところ、純水に浸した酸化チタンと比較し表面疎水性に変化が見られた。これは、液中に含まれる有機物が材料表面に付着し薄い層を形成するためであり、生体内や環境中のような実環境に近い条件での微生物付着性を予測するためには、吸着した有機物層を介した材料表面性状の解析方法を考案する必要があることが改めて示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在の研究環境では純粋培養を行うための設備が十分ではなかったことから、本年度は微生物を培養できる環境を整えることからスタートした。その甲斐もあり、出芽酵母や大腸菌の純粋株を用いた付着性評価試験を行うことができるようになった。一方で本年度の目標であった、材料表面へのタンパク質吸着の評価と、液中における材料表面分析については解決できておらず、早急にこれらの解析方法を確立する必要がある。以上の内容より本研究課題の進捗状況について(3)やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度解決できなかったタンパク質の吸着特性評価と液中での材料表面自由エネルギーの測定を中心に実験を進めていく。 タンパク質吸着に関しては、吸光度計によりタンパク質の吸着量を定量することで各材料表面とタンパク質の付着親和性を評価する予定である。液中での表面自由エネルギーの測定に関しては調査を進めていく中で、通常行われる空気中での表面自由エネルギーの計測をそのまま応用することができず、新たな計算方法を考案する必要があることが分かった。現在、表面性状解析に関する専門家の方々にアドバイスをいただき、液中における表面自由エネルギーの測定方法やその有用性について検討中である。
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Causes of Carryover |
研究進捗およびコロナによる影響のため本年度は学会発表の機会が少なく、参加した学会についてもオンラインでの開催だった。そのため旅費として計上していた5万円と、その他に含まれる学会参加費等5万円を使用しなかったことから、10万円を次年度に繰り越すことになった。
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Research Products
(1 results)