2021 Fiscal Year Research-status Report
末梢神経をターゲットとした神経幹細胞移植による脱神経横隔膜の機能再建
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21K20515
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
浅見 雄太 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (90908740)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 神経幹細胞移植 / 末梢神経 / 再生医療 / 難治性呼吸筋麻痺 |
Outline of Annual Research Achievements |
8週齢のラットを用い、横隔神経の切離により左横隔膜を脱神経した。腹腔側より坐骨神経・脛骨神経を連続して採取し遊離神経片として縫合した。縫合部位は横隔膜の中央、周辺部というように位置を変えて検討した。その1週後、日齢14日の胎子より採取した神経幹細胞を遊離神経内に注射した。3ヶ月後、機能評価として電気生理学的検査(CMAP)と透視による横隔膜の滑動距離を測定した。また、組織学的評価として免疫蛍光染色による神経片と神経筋接合部の評価を行った。 結果:横隔膜中央部に神経を縫合したラットでは、8匹中6匹で横隔膜の運動とCMAPの測定が可能であり、透視上の横隔膜滑動距離は平均3.22±0.98mmであり、CMAPの振幅は平均1.24±0.78mVであった。また、免疫蛍光染色では移植した幹細胞の生着と神経筋接合部の再支配を認めた。一方、横隔膜の周辺部に神経を縫合したラットでは、移植した幹細胞の生着や部分的な神経筋接合部の再支配を認めたものの、CMAPの測定は不能であり、肉眼的に明らかな横隔膜の収縮を認めなかった。 遊離末梢神経内に移植した神経幹細胞は生着し、組織学的に神経筋接合部を再支配可能であることが示された。また、神経の縫合部位としては横隔膜の中央部が最も有効な縫合部位であることが示された。横隔膜周囲に神経を縫合したラットでの有効な筋収縮が認められなかった理由は、再支配された神経筋接合部が、脱神経によって新たに形成された異所性の神経筋接合部であり、その機能がoriginalの神経筋接合部のものより悪いためという可能性がある。 この研究結果は我々が四肢で構築した、中枢との連絡の再建に依存しない、末梢完結型の運動機能再建を横隔膜へ応用することが可能であることを証明し、頸髄損傷や筋萎縮性側索硬化症などによる難治性呼吸筋麻痺の治療法に新たな可能性をもたらすと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目標としていた、遊離末梢神経片内に移植した神経幹細胞が脱神経した横隔膜を組織学的に再支配すること、電気刺激により横隔膜は収縮することを証明することができた。 また、最も効果的な神経縫合部位の同定も達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
移植した神経幹細胞に由来するニューロンとドナーとなった末梢神経の軸索のどちらが脱神経横隔膜を再支配したのかに関して検討を行う必要がある。そのため、横隔膜に逆行性神経トレーサーを注入し、形成された神経節にどの様に取り込まれるかという実験を行う予定である。また、より効率的な横隔膜の収縮を得るため、複数箇所の神経縫合を行い、滑動距離にどのような差が生じるか検討する予定である。
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Causes of Carryover |
実験の進行が当初の予定よりも順調であり、使用する実験動物や抗体の使用量が少なかったため、支出額が少なかった。次年度は論文作成や学会発表を行う予定であり、更に追加実験も行う予定である。
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Research Products
(2 results)