2021 Fiscal Year Research-status Report
Low-voltage-driven actuator using intermolecular forces
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21K20527
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
周 泓遥 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (20902092)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | ソフトアクチュエーター / レドックス応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はヨウ素をレドックス活性なゲスト分子,それを包摂するポリマーとしてポリエチレングリコールを用いることで,酸化還元反応に応答して可逆的に収縮または膨潤する高分子ゲル材料の開発に取り組んだ。ラマン分光分析や紫外可視分光分析を用いることでポリマー鎖に取り込まれたヨウ素の化学状態を同定することに成功した。また,レオロジー測定によって,酸化状態における高分子ゲルの弾性率が還元状態に比べて10倍以上大きくなることも明らかとなった。酸化還元反応によって大きな弾性率の変化を示す材料は極めて稀であり,将来電気によって柔らかさが自在に変化する材料へ応用されることが期待される。
本研究では上記の組み合わせの他にも酸化還元に応答するポリマーの可能性を探求した。結果として,レドックス活性なゲスト分子に鉄錯体,それを包摂するポリマーとしてウレイド基およびアミノ基を有するカチオン性ポリマーを用いると,還元状態においてはポリマー鎖が凝集し,酸化状態においては溶解することが明らかとなった。この凝集-溶解挙動はヨウ素-ポリエチレングリコールの組み合わせと酸化還元状態が逆であり,ヨウ素系が疎水性相互作用であるのに対し,鉄錯体系においてはクーロン相互作用によるものであると考えられる。具体的には鉄錯体が還元状態において4価の陰イオンとなり,正電荷をもつカチオン性ポリマーとの強いクーロン相互作用によりポリマー鎖が凝集したと考察している。今後詳細なメカニズムの検討を行う予定である。
以上の結果に基づいて,国内特許を1件出願し,2022年3月に開催された日本化学会春季年会において2件の口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は計画通りラマンおよび紫外可視分光分析によりポリエチレングリコールに包摂されたヨウ素の化学状態を同定することに成功した。さらにレオロジー測定により,弾性率が極めて可逆的に変化するという当初の予想以上の結果が得られた。また,初年度においてヨウ素の他に鉄錯体を用いても酸化還元に応答して凝集/溶解するポリマーを発見することにも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は主に化学的酸化還元反応を利用して高分子ゲルの膨潤/収縮させる方法に集中した。次年度は電気エネルギーを使用して高分子ゲルを可逆的に膨潤/収縮させる方法を確立する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度使用した試薬(ポリエチレングリコールジアクリレート)は自身で合成することにより調達したため,既製品よりも遥に安価な原材料(ポリエチレングリコール)の購入で済んだ。余剰分の経費は次年度使用する試薬や消耗品の購入に充てる予定である。
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