2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K20534
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
桶谷 龍成 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (60874956)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 有機結晶 / 晶析 / 光学分割 / 動的結晶化 / ジアステレオマー / キラリティー / キラル結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ジアステレオマーの一方の不斉中心をラセミ化させつつ結晶化をすることにより、一方のジアステレオマーのみを結晶として得る「デエピメリ化」の実証に取り組んでいる。特に、ジアステレオマー間の熱力学的安定性を克服し、両ジアステレオマーから所望の異性体を選択的に得ることを目指す。初年度は2つの不斉中心を持つ化合物として、ジペプチド化合物を選択し合成と結晶化に取り組んだ。不斉中心の一方のみを選択的にラセミ化させつつ、結晶性を向上させる保護基の導入を検討したところ、ベンジルオキシカルボニル基やtert-ブトキシカルボニル基をもつジペプチド化合物の結晶構造解析に成功している。この過程で、Boc-MetGly-OMe(MGP)が低温で秩序―無秩序型の相転移現象を示すことを偶然見出した。低温相は非対称単位中に含まれる独立分子の数(Z’)が8であり、ジペプチド化合物として最大の値であった。またこの相転移挙動は温度可変第二高調波発生によっても確認された。さらに量子化学計算により、結晶構造の格子エネルギー差を定量的に評価することに成功した。この結果は、実験開始当初に想定したものではないが、有機分子性結晶の多形現象の理解の一助となるものであると考えている。一方で、本来の目的であるデエピメリ化の実証では、ジペプチド化合物の塩基によるエピメリ化挙動の評価に取り組んだ。化合物の溶解性の低さ、塩基に対する分解が確認されており、引き続き条件検討に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点で、ジペプチド化合物の結晶化と組み合わせられるエピメリ化条件の探索を行っているものの、化合物の分解を引き起こさない条件の発見にはいたっていない。しかしながら、いくつかの候補となるジペプチド保護体結晶の構造解析に成功している。その過程でMGPの結晶が興味深い挙動を示したため現象の解明に取り組み、Crystal Growth and Design誌に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はエピメリ化条件の決定と相図の構築に注力し、所望のジアステレオマーを選択的に得る手法の探索に取り組む。さらに、不斉中心を3つ以上もつ化合物への適用を視野に入れ、デエピメリ化を介したオリゴペプチドの合成にも挑戦する。
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Research Products
(2 results)