2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K20535
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
加藤 俊介 大阪大学, 工学研究科, 助教 (60909125)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 人工金属酵素 / 進化分子工学 / 指向性進化法 / C-H結合官能基化 / 生体触媒 / ヘムタンパク質 / 金属ポルフィリノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、進化分子工学的手法を遷移金属錯体へと応用し、優れた触媒特性を発揮する新規高機能触媒を開発することを目的とする。具体的には、非天然の遷移金属錯体を補因子としてタンパク質に導入した「人工金属酵素」を構築し、指向性進化法(directed evolution)を駆使した遺伝子工学的な改変を実施する。令和3年度は、鉄コロール錯体を補因子としてミオグロビンに導入した人工金属酵素を構築し、指向性進化法によるタンパク質反応場の改変を実施した。ミオグロビンのヘム結合サイトを構成する複数のアミノ酸残基を選定し、部位飽和変異導入(site-saturation mutagenesis)によりランダム化した変異体ライブラリをスクリーニングすることで、ABTSの酸化反応に対して高いペルオキシダーゼ活性を示す変異体を獲得することに成功した。加えて、Pd-NHC錯体やチアミン二リン酸を補因子とする人工金属酵素の開発にも現在着手しており、これらの人工金属酵素の指向性進化法による改変も今後実施する予定である。また、令和3年度は、効率的な人工金属酵素の指向性進化を実現するために、オリゴペプチドを精製タグに用いた新たなハイスループットスクリーニング(HTS)手法を確立した。本HTS手法は、オリゴペプチド精製タグとMBP融合ストレプトアビジンを用いて、人工金属酵素の指向性進化を細胞夾雑物非存在下で実現する強力な手法である。今後、このHTS手法を最大限に活用し、進化分子工学による高機能金属酵素の開発に着手する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、指向性進化法(directed evolution)による人工金属酵素の遺伝子工学的な改変を実施し、優れた触媒活性を発揮する新規高機能触媒を開発することを目的とする。令和3年度は、目標の一つであった非天然金属ポルフィリノイド(鉄コロール錯体)を補因子とする人工金属酵素について、指向性進化法による改変を実施し、触媒活性を向上させることに成功した。また、Pd-NHC錯体やチアミン二リン酸を補因子とする他の人工金属酵素の構築も実施しており、今後、これら人工金属酵素の指向性進化法による改変も行う予定である。加えて、令和3年度は、効率的な指向性進化の実現に資する基盤技術の開発にも精力的に研究を実施した。なかでも、オリゴペプチドを精製タグに用いた新規ハイスループットスクリーニング(HTS)手法は、今後の研究展開を加速する基盤技術となることが期待される。以上の成果から、おおむね順調に進展しているとの評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策として、以下の2項目について特に重点を置き研究を遂行する。(i) 指向性進化の結果得られた上記の鉄コロール錯体を含む人工金属酵素について、詳細な解析(X線結晶構造解析・速度論解析)を実施する。そして、指向性進化法により導入されたアミノ酸残基への変異が、非天然の金属錯体の触媒活性にどのように寄与しているのかを明らかにする。(ii) 令和3年度に新しく構築したPd-NHC錯体やチアミン二リン酸を補因子とする人工金属酵素について、指向性進化法による改変を実施し、優れた触媒特性を示す変異体を獲得する。この時、指向性進化法のスクリーニングには、上記のオリゴペプチドを精製タグに用いた新規ハイスループットスクリーニング(HTS)手法を活用する。
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Causes of Carryover |
2021年度は、人工金属酵素の指向性進化にむけた金属錯体とタンパク質との複合化の条件検討に想定より時間がかかり、計画の一部を先送りにした。これにより生化学消耗品購入経費が未使用となったが、本計画は2022年度に引き続き実施予定であるため、この未使用額は計画通り生化学消耗品の購入費に充てる。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、当初参加を予定していた国際学会・国内学会がオンライン開催となり、旅費やその他経費の支出額が減少した。この未使用額は2022年度以降、錯体化学討論会等の国内学会の対面形式での開催が見込まれるため、この経費に充てることとする。
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Research Products
(6 results)