2022 Fiscal Year Annual Research Report
近赤外領域に高い二光子吸収能を持つケージド化合物の設計、合成、生理学実験への応用
Project/Area Number |
21K20539
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
千歳 洋平 九州大学, 工学研究院, 助教 (60911534)
|
Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
|
Keywords | 2光子吸収 / ケージド化合物 / D-π-D |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度より合成を達成していたクマリンの3位を2重結合によって拡張したD-π-D型発色団1について、トルエン中における発光量子収率はおよそ0.77と比較的高い値を示していたため、フェムト秒の超短パルスレーザーを用いて2光子励起による発光の観測を試みた。近赤外領域(700-800 nm)のパルス励起光を1に照射したところ、緑色に発光している様子が観測されたため、1の2光子吸収断面積を実験的に求めることとした。集光レンズを用いて、分光器に1からの発光を取り込み、リファレンス化合物としてフルオレセインを用いて、1の2光子吸収断面積を算出したところ、700 nmにおいて498 GMと比較的高い2光子吸収断面積の値が得られた。一方で、1の構造を保護基として用いたケージド安息香酸の1光子アンケージング量子収率は0.27であったので、2光子励起によるアンケージング効率δuは498×0.27=134 GMと見積もることができた。このδuの値から、1のようなD-π-D型クマリン骨格を持つケージド化合物は、生理学実験に十分応用が可能であることが示された。 本研究期間全体を通して、クマリン型ケージド安息香酸の光アンケージング時に生成するメチルカチオン中間体を実験的に捕捉できたことは、クマリン型ケージド化合物を生体応用する際の反応メカニズムを考える上での重要な情報になると期待される。 また、本研究で設計、合成したクマリン型ケージド化合物が生体内でのアンケージング反応に応用可能な範囲であると示したことと、フェムト秒レーザーを用いた2光子励起蛍光法による2光子吸収断面積の測定手法を構築できたことは、今後、2光子励起可能な光解離性保護基の開発の加速に繋がると期待される。
|