2021 Fiscal Year Research-status Report
Mapping of energy and electron transfer pathways in photosynthesis by transient two-dimensional infrared spectroscopy
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21K20545
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
米田 勇祐 分子科学研究所, 協奏分子システム研究センター, 助教 (60903721)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 二次元分光 / 赤外分光 / 光合成 / エネルギー移動 / 電子移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は過渡2次元赤外分光装置を新しく構築することを目的とし、まずは可視励起パルスを発生させるために、Ybレーザーを光源とした自作の非同軸光パラメトリック増幅器の構築を行なった。構築した非同軸光パラメトリック増幅器はYbレーザーの発振波長である1028 nmの第2高調波(514 nm)をポンプ光とすることによって、波長範囲600-980 nmにおいて幅100-200 nmの広帯域なパルスを発生させることができる。この波長領域で発生したパルスを直接用いる、あるいはその第2高調波を用いることで、クロロフィルやカロテノイドといった光合成色素を光励起することができる。さらに、発生したパルスをウェッジガラス及びチャープミラーを用いて圧縮することにより、パルス幅をサブ10フェムト秒まで圧縮することに成功した。得られた超短パルス光源を用いて時間分解インパルシブ誘導ラマン分光測定装置の構築を行い、さらにYbレーザーの基本波をサファイア板に集光して得られた白色光を組み合わせることで、広帯域過渡吸収分光装置の構築を行なった。装置の構築においては、CMOSセンサや光学遅延ステージ等の測定装置を制御するためのプログラムをLabVIEWを用いて自作することにより、Ybレーザーの高い繰り返し周波数と同期した信号取得を行えるようにし、効率的に精密な測定を行えるよう工夫した。構築した時間分解分光装置の性能を評価するため、アセトニトリルの非共鳴ラマン誘起カー効果測定を行なったところ、3000 cm-1までの高波数振動を実時間上で観測することに成功した。さらに第2高調波を励起パルスとして用いた場合においても、ペリレンの過渡吸収スペクトル測定において、100-1800 cm-1程度の励起状態に帰属されるコヒーレントな分子振動を検出することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はYbレーザーをベースとした自作の非同軸光パラメトリック増幅器の構築、さらにそれを用いた過渡吸収測定装置及び時間分解インパルシブ誘導ラマン分光装置の構築を行うことに成功した。特に第2高調波発生により得られた短波長領域(400-450 nm)のパルスで2000 cm-1程度までの高波数振動を実時間で観測できたことは大きな進歩であると考えられる。また、LabVIEWを用いた自作の測定プログラムによって、光学遅延ステージや検出器を効率的に制御することにも成功しており、数分間の内に過渡吸収測定においてはノイズレベル0.1 mOD以下、インパルシブ誘導ラマン分光においては0.025 mOD以下の高いS/Nで数100点のデータを測定することに成功している。以上のように新規レーザーシステムからゼロベースで高精度の測定装置を構築することに成功しているため、本研究課題は順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、過渡2次元赤外分光装置の完成を目的とし、中赤外パルスを発生させるための自作の同軸光パラメトリック増幅器の構築を行う。現在中赤外パルス発生用の結晶を発注しており、それが届き次第、中赤外パルス発生装置の構築および過渡赤外分光測定システムの構築に着手する。検出系の装置制御のためのプログラムに関しては、既に過渡吸収分光装置に使用しているものを改良することで対応する。したがって中赤外パルスの発生に成功すれば、すぐに過渡赤外分光測定にも取り掛かれると考えられる。さらに、発生した中赤外パルスを3つに分割し、2つを励起パルス、1つを観測パルスとして用いることで2次元赤外分光を測定できるシステムを構築する。得られた時間領域信号のフーリエ変換によるデータ処理は、すでにインパルシブ誘導ラマン分光信号の解析で用いているコードを改良することで対応する。最終的には可視パルスと組み合わせることで過渡2次元赤外分光装置を完成させる。また、新規計測システムの構築と並行して、光捕集アンテナや光化学系等の光合成タンパク質の過渡吸収測定等も行なっていく予定である。
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