2021 Fiscal Year Research-status Report
Degradation control of biodegradable plastics using photosensitizer
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21K20547
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
日野 彰大 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (90908782)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 光増感剤 / 活性酸素 / 抗菌性 / 生分解性プラスチック |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,可視光領域に吸収を持つ光増感剤を分解抑制のトリガーとして用い,光を受け発生した活性酸素を利用することで,光劣化は引き起こさない分解抑制力の強い生分解性プラスチックを開発することである。本研究では可視光領域に吸収帯を持つポルフィリン類縁体を用いた。ポルフィリン類縁体は可視光を受けることでエネルギー移動を介して,一重項酸素を発生させる。これがプラスチック表面の分解菌を死滅させることで,生分解性を抑制できると考えた。 研究開始1年目である本年度は,実施計画に従って多糖類で水溶化したポルフィリン類縁体に浸漬させ,生分解性プラスチック表面へ移行させる複合化方法を検討した。ポルフィリン類縁体としてテトラフェニルポルフィリン(TPP),テトラアミノフェニルポルフィリン(TAPP),テトラヒドロキシフェニルポルフィリン(THPP)の3種を選択し,多糖類はプルランを用いた。高速振動粉砕法による水溶化によって約1mMの水溶液を得,この溶液に100μm厚のポリカプロラクトン(PCL)フィルムを浸漬させ,数日室温で静置した。結果,THPPのみでフィルムに着色が見られた。このことから,ゲスト交換によるポルフィリンのフィルムへの移行が可能であることが明らかになった。しかし,フィルムに対するポルフィリンの移行量や,内部へどれだけ浸潤しているかどうかを定量しようと試みたものの,その移行量の低さから定量は困難であった。また,移行量が低いことで生分解の抑制効果が明確に表れなかったため,本研究における試料作製方法として採用することは困難であると判断した。 今後は代替案として提示していた,ポルフィリン類縁体をポリマー中に直接分散させる方法を試料作製方法として用い,その生分解性について検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画していたように,多糖類で水溶化したポルフィリン類縁体が生分解性プラスチック表面へ移行する現象を見出したものの,移行量の低さから定量が行うことが困難であった。また生分解性への影響が著しく低かったため,光を受けて発生する活性酸素と材料の分解抑制力との関係性を明らかにすることができなかった。現在,代替案として提示していた方法によってデータを得ようとしている段階である。また,特許出願を検討しているものの,データ不足から着手が遅れている。 以上の事項を総合的に判断し,本研究課題の進捗はやや遅れているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き,ポルフィリン類縁体複合化ポリマーのサンプル作製を試みる。当初の計画における手法で作製したサンプルの問題点は,ポルフィリン類縁体の移行量(ポリマーに対する含有量)が低い点にあった。そのため,代替案に示したポリマー中にポルフィリンを直接分散させる方法を検討することで,この問題は解決すると考えられ,これまでの遅れも取り戻せるものと思われる。作製した複合化サンプルを用いて,抗菌性評価,光の照度・波長・光照射/遮光サイクルをパラメータとした生分解抑制効果の発現評価,活性酸素種が抗菌作用に関与するメカニズムの解明を行っていく。さらに,生分解抑制力を相乗的に高める方法として抗菌剤を併用した場合の生分解性特性も併せて検討する。 知見がまとまった時点で,特許出願および学会発表,SCI論文にて外部への発信を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って,出勤制限が設けられることとなり,テレワーク期間は実験を停止せざるを得なかった。そのために実験時間が想定より短くなった結果,物品購入の頻度も必然的に少なくなった。以上の理由から,請求金額よりも実支出額が少なくなり,次年度使用額が生じた。 次年度の使用計画は,翌年度請求分と合わせて引き続き物品費として使用し,実験が進捗した結果必要だと判断した主要物品の購入を予定している。さらに,出張の頻度も高まることが予想されることから,旅費としての使用も予定している。
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