2021 Fiscal Year Research-status Report
自己発光ハロゲン化物シンチレータの発光メカニズム仮説の実験的検証
Project/Area Number |
21K20550
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小玉 翔平 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (30910096)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | シンチレータ / 自己発光 / 蛍光体 / ハロゲン化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、自己発光ハロゲン化物シンチレータA2BX6(A:アルカリ金属元素、B:4価金属元素、X:ハロゲン元素)の発光メカニズムを実験的に明らかにすることである。A2BX6の中には、2015年に米国で報告された青色発光Cs2HfCl6や、代表者が単結晶育成に成功した赤色発光Cs2HfI6・Rb2HfI6などがあり、いずれも40,000光子/MeVを超える高い発光量と良好なエネルギー分解能を有するシンチレータとして注目を集めている。しかしその発光メカニズムは、いくつかのモデルがシミュレーションによって提案されているものの未決定である。理論に基づいて効率よく性能改善を行うためには、発光メカニズムの解明が必要である。そこで本研究では、いくつかのA2BX6型ハロゲン化物を実際に合成し、構成元素と発光の有無を調査することで、発光メカニズムの実験的な決定を目指す。 2021年度は、まず着任研究室におけるハロゲン化物合成環境の立ち上げから取り組んだ。真空型小型グローブボックスをはじめとする真空部品・ポンプ等の必要物品を購入し、セットアップを行った。また、ハロゲン化物用石英ガラスアンプルの素形材として、石英ガラス素管を購入し、ガラス加工を行い、合成の基本的な環境を整えた。塩化物原料粉末を購入し、所属研究室が現有していた粉末と混合し、ハロゲン化物の合成テストとしてCs2ZrCl6を焼成した。焼成したサンプルをシンクロトロン施設に持ち込んで極低温発光スペクトルを測定したところ、室温付近ではHfと同様に発光が見られ、室温で見えていた発光が150K以下で大きく強度が上がることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハロゲン化物を取り扱う基本的な実験環境を整備でき、簡単な試料の合成まで取り組むことができた。立ち上げた実験環境を利用して2022年度も試料合成に取り組むことができ、総合的に、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は電荷移動遷移発光を起こし得ない元素として、A2BX6のBに対しIrなどを導入する予定である。現状としては申請した実験計画にのっとり、まずはXをCl(塩化物)として合成を行い、Bイオンが発光に及ぼす影響を調査する。しかし昨今の世界情勢から、Irをはじめとする貴金属の供給が極めて不安定となり、当初の予定から変更せざるを得ない可能性もある。その場合は、当初は予定になかったが、Bに導入するイオンをMnやTiなど入手性のよい金属イオンに変更して実験を行う。
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Research Products
(3 results)