2022 Fiscal Year Annual Research Report
分離境界のリアルタイムな可視化による微量希土類元素分析の実現
Project/Area Number |
21K20563
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
和田 彩佳 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (80711176)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 化学分離 / 希土類元素 / ネオジム / ジスプロシウム / 誘導結合プラズマ質量分析計 |
Outline of Annual Research Achievements |
ネオジム磁石には、ネオジム(Nd)以外に含まれる貴重なジスプロシウム(Dy)が含まれている。Dyを化学分離において効率的に回収するために、Dyと同様のカラム分離挙動を示すユーロピウム(Eu)が発光する性質に着目し、分離境界がリアルタイムで見える「可視化カートリッジ」を開発して簡便・確実にNdを除去することで微量Dy測定の実現を目指した。 2022年度は、引き続き可視化カートリッジの開発に取り組んだ。蛍光配位子として選択したATBTA-Eu+3と樹脂の結合には成功したように見えたが、配位子からEuを外した後では再度Eu溶液を接触させても蛍光が戻らず、Euの通過を知らせる可視化カートリッジとしては機能しなかった。この課題を解決するには様々な条件検討が必要なため、現時点では可視化カートリッジの作成は難しいと判断した。 そこで、トリプル四重極誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS/MS)と、化学分離法の組み合わせによる、分離境界の見極めが不要な化学分離法を用いて簡便なDyの含有量測定法の開発を目指した。2022年度は、高濃度ネオジム溶液を試料とし、LN2 Resin(Eichrom Technologies社製)を用いた化学分離によってNd等の軽希土類元素を除去し、Dy等の重希土類元素を回収してICP-MS/MSによる測定を行った。 化学分離ではNdの除去率は99 %以上かつDy、イットリウム、テルビウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムが定量的に回収できたことを確認した。さらに、酸素ガスを用いたICP-MS/MSの併用により、試料に残存したNdに由来する酸化物干渉の影響を低減した測定が可能になった。これにより、ネオジム磁石のようなNdを大量に含む試料に対して、簡便な操作でより正確にDyの含有量を把握することが期待できる。
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