2021 Fiscal Year Research-status Report
マルハナバチが植物に与える開花促進物質の探索および作用機構の解明
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21K20575
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
森 信之介 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教(有期) (10912404)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | マルハナバチ / 傷害行動 / 開花促進 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヨーロッパに生息するセイヨウオオマルハナバチは、花粉が不足すると、花の咲いていない植物の葉に穴に口吻と大顎を使って穴を開け、開花を促進させる。本研究では、マルハナバチが葉に穴を開ける際に開花を促進する物質を植物に与えているという仮説のもと、この物質の探索ならびに開花促進メカニズムの解明を目的とした。 セイヨウオオマルハナバチは特定外来生物に指定されているため、国内在来種であるクロマルハナバチを用い、セイヨウオオマルハナバチと同様の行動特性があるかを観察した。巣内の花粉を人為的に減らして半飢餓状態に調節し、花の咲いていないトマトとシロイヌナズナの苗を与えて観察したが、葉に穴を開ける行動はみられなかった。並行して、クロマルハナバチのメス(働き蜂)から得た抽出物の開花促進活性を調べた。植物にはモデル植物であるシロイヌナズナを採用し、本科研費で購入した人工気象器内で栽培した。試料溶液をシリンジインフィルトレーション法によって葉の細胞間隙に浸潤させることにより抽出物を与え、開花までに要する日数を評価した。無処理、水、クロマルハナバチの抽出物を個別に供与した場合、水を供与した場合にも開花が早まる傾向を示したが、クロマルハナバチ抽出物を与えた場合には有意な開花促進が認められた。葉への傷害行動自体は観察されなかったものの、シロイヌナズナの開花を促進する化学的因子がクロマルハナバチ抽出物に含まれることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主目的は、マルハナバチの行動特性の調査ならびにハチ抽出物を用いた開花促進活性評価系の確立である。既に葉への傷害行動が観察されているセイヨウマルハナバチと異なり、クロマルハナバチでは傷害行動は観察されなかったが、シリンジインフィルトレーション法を用いた評価系を構築し、抽出物の開花促進活性を確認できた。来年度は、これを利用しながら開花促進物質の探索を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
クロマルハナバチの抽出物を葉から注入すると、シロイヌナズナの開花が促進される。来年度は、セイヨウマルハナバチ抽出物との活性の強さを比較し、より強い活性を示すハチの抽出物から活性物質の構造決定を目指す。活性を評価しながら抽出物を各種クロマトグラフィーで精製し、活性物質を単離する。この活性物質の構造解析から、開花を促進する化合物の化学構造に迫る。
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Causes of Carryover |
(理由) 物品費において予定よりも支出が少なく済み、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 研究に必要な有機溶媒などの試薬購入のための物品費として計上する。
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