2021 Fiscal Year Research-status Report
イネいもち病菌の生存に影響する放線菌との相互作用を成立させる分子機構の解明
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21K20576
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
古山 祐貴 東京理科大学, 理工学部応用生物科学科, 助教 (70906742)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 微生物間相互作用 / ケミカルシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は糸状菌-放線菌間相互作用を成立させる分子機構の解明を目指すものである。自然環境中では微生物は互いに影響を与えながら生きているが、実際に相互作用関係にある微生物の特定が困難であるなどの理由から相互作用の機構には未詳な点が多い。申請者は植物病原糸状菌のイネいもち病菌が土壌放線菌Streptomyces griseusと細胞外に放出される代謝産物 (ケミカルシグナル) や物理接触を介して生育を促進もしくは抑制しあう「相互作用関係」にあることを見出している。現在は、これらの菌間にある相互作用機構を分子レベルで明らかにすることを試みている。 本年度は放線菌の生育を促進するいもち病菌由来ケミカルシグナルの探索を行った。まず対峙培養により、これまでに確認されている、いもち病菌が放線菌の生育を促進するという現象の再現性を確認した。培養条件が最適ではない可能性が示唆されたため、培養条件の検討と最適化を行った。これにより、解析対象とする現象を再現良く誘導することが可能となった。続いて、対峙培養を行っているプレートから各種有機溶媒を用いた代謝産物の抽出を行い、TLCによる分析を行った。その結果、抽出溶媒として酢酸エチルを使用するのが最適であることが確認された。次に、いもち病菌由来ケミカルシグナルを大量に取得することを目指し、液体培養を行い、培地からの抽出を行った。現在は、抽出物の放線菌に対する活性評価を行うとともに、TLCを始めとする手法で分析することで活性本体の探索を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究環境の変化に伴い、使用している微生物の状態が変化してしまった。そのため、培養条件の最適化および注目している現象の再現性の確認に時間がかかった。現在はこれらの問題点は解決され、再現よくいもち病菌によって放線菌の生育を誘導することが可能となっている。また、放線菌の単独培養を行ったプレートと対峙培養を行ったプレートから化合物を抽出し、TLCによる分析を行った。その結果、放線菌の単独培養プレートからは検出されず、対峙培養を行ったプレートからは検出されるバンドが存在することを確認した。現在はこれらのバンドに含まれる化合物を同定するために分析を進めるとともに、抽出液を用いても放線菌の生育を促進することができるかどうかの確認を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
放線菌の単独培養を行ったプレートからは検出されず、いもち病菌との対峙培養を行ったプレートでのみ検出される化合物を見出しているので、この化合物が実際にいもち病菌由来の代謝産物であることの確認を行う。そのために、いもち病菌の単独培養を行ったプレートの抽出及び分析を行う。また、対峙培養時およびいもち病菌単独培養時のクルード抽出液及びクロマトグラフィーによる精製画分を用いて、放線菌の生育が対峙培養時と同じように誘導される条件の検討を行う。以上により、放線菌に対して生育促進作用を示す化合物の単離を行う。単離でき次第NMRにより分析し、構造を決定する。その後、構造活性相関やプルダウンアッセイ、RNA-seq解析などによる作用機序解析を実施することを予定している。
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Causes of Carryover |
学会に参加するための旅費を計上していたが、オンラインでの開催だった。また、当初はゲノム解析は全て外注する予定だったが、第3世代シーケンサーである「MinION」を導入したため、外注するよりも安価に解析することが可能となった。さらに、取得したデータを解析するために「CLC genomic workbench」の年間ライセンスを購入する予定だったが、オープンソースソフトウェアを活用した解析環境が構築できたため、ライセンスの購入を見送った。加えて、申請時の研究計画から遅れ気味なため、いくつかの消耗品に関しては購入に至らなかった。以上の理由により、当初の予定よりも支出が少なかった。 次年度は、当初から購入を予定していた消耗品を購入するとともに、標的探索に向けたプルダウンアッセイに必要な試薬を購入する。また、MinIONだけでは不十分な場合にはRNA-seq を外注することも再度視野に入れて検討する。
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