2021 Fiscal Year Research-status Report
Is a Hydrogenase-Like Enzyme Complex Lacking a Catalytic Center the Missing Link in the Respiratory Complexes?
Project/Area Number |
21K20578
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
井上 真男 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 助教 (90906976)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 呼吸鎖複合体 / ヒドロゲナーゼ / 分子進化 / 微生物ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
始原的呼吸酵素複合体である呼吸型 [NiFe] ヒドロゲナーゼとミトコンドリアの呼吸鎖複合体 I は共通祖先から進化したと考えられている。しかし、始原的 [NiFe] ヒドロゲナーゼの登場以降、どのような進化プロセスを経て呼吸鎖複合体 I に至ったのかは謎である。本研究では、始原生物からヒトに至るまで呼吸の根幹を担う [NiFe] ヒドロゲナーゼ/呼吸鎖複合体 I 酵素群のタンパク質進化における「ミッシングリンク」を解明することを目指し、NiFe 活性中心を失った呼吸型ヒドロゲナーゼ様酵素複合体 Ehr の呼吸機能を明らかにする。具体的には、(1) Ehr は呼吸酵素としてはたらくのか? (2) Ehr は何から電子を受け取り何に渡すのか? (3) Ehr はどういった環境に分布しているのか? の 3 つの問いに答えることを目的とする。 今年度の主な研究成果は以下の 2 点である。(1) ゲノム・メタゲノム情報を用いたバイオインフォマティクス解析によって、Ehr を保有する全ての原核生物ゲノムについてそのゲノム系統と環境中の分布、Ehr の分子系統と各サブユニットの特徴を明らかにした。その結果、Ehr は呼吸酵素の特徴を有しており、バクテリア・アーキアを問わず微生物ゲノムに広く分布していることが明らかになった。(2) 嫌気性細菌 Geobacter sulfurreducens について、マーカーレス遺伝子欠失法を用いて ehr 遺伝子欠損株の作製に成功し、生理機能解明と分子機能解明に向けた基盤構築に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに Ehr を保有する全ての原核生物ゲノムを明らかにし、その分類群と環境中の分布、Ehr の分子系統と各サブユニットの特徴を解析した。Ehr は全原核生物門の 70% に分布しており、水圏・陸圏を問わず様々な環境に存在していることが分かった。Ehr の各サブユニットは、4 つのプロトン輸送サブユニットと 2 つの触媒サブユニットが保存されており、AlphaFold2 による立体構造予測もこれらの複合体形成を支持した。触媒サブユニットは [NiFe] ヒドロゲナーゼに近い一部の系統を除く全ての配列において NiFe 活性中心形成モチーフを失っていたほか、配列によって鉄硫黄クラスター形成モチーフの数も異なっていた。以上の結果から、Ehr は呼吸酵素の特徴を有しており、配列多様性を示しつつも微生物ゲノムに広く分布していることが明らかになった。さらに、マーカーレス遺伝子欠失法により G. sulfurreducens の ehr 欠損株の作製に成功した。現在のところ顕著な表現型の違いは見られず、少なくとも Ehr は生育に必須ではないことが分かった。以上の進捗から当初の研究目標に向けて十分な成果が見込まれるため上記の評価となった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) G. sulfurreducens の ehr 遺伝子欠損株について、電子供与体や受容体などの条件を変えて培養し、増殖や転写プロファイルといった表現型を解析する。状況に応じて、他の呼吸酵素遺伝子群との二重欠損株も構築し、同様の解析を行う。(2) G. sulfurreducens の ehr 過剰発現株を構築し、Ehr 複合体を精製し、構成するタンパク質を明らかにするほか、電子伝達体の種類を変えて酸化還元活性を測定することで、Ehr の基質特異性を明らかにし、呼吸機能を解明する。(3) ゲノムワイドなバイオインフォマティクス解析によって ehr 遺伝子群の周辺遺伝子群と分類群、分子系統の情報から Ehr の機能予測や分類を行う。2022 年度は以上 3 点を中心に引き続き研究を推進し、得られた成果は学会発表や原著論文を通じて社会に広く公表する。
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[Journal Article] Initial Step of Selenite Reduction via Thioredoxin for Bacterial Selenoprotein Biosynthesis2021
Author(s)
Atsuki Shimizu, Ryuta Tobe, Riku Aono, Masao Inoue, Satoru Hagita, Kaito Kiriyama, Yosuke Toyotake, Takuya Ogawa, Tatsuo Kurihara, Kei Goto, N. Tejo Prakash, Hisaaki Mihara
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Journal Title
International Journal of Molecular Sciences
Volume: 22
Pages: 10965
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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