2022 Fiscal Year Annual Research Report
Is a Hydrogenase-Like Enzyme Complex Lacking a Catalytic Center the Missing Link in the Respiratory Complexes?
Project/Area Number |
21K20578
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
井上 真男 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 助教 (90906976)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 呼吸鎖複合体 / ヒドロゲナーゼ / 分子進化 / 微生物ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、NiFe 活性中心を失った呼吸型ヒドロゲナーゼ様酵素複合体 Ehr について、バイオインフォマティクス解析と遺伝学的解析を行った。主な研究成果は以下の 2 点である。(1) ゲノム・メタゲノム情報を用いた相同性検索によって、30 万を超える原核生物ゲノムから EhrL 触媒サブユニットのアミノ酸配列を抽出した。多重配列アラインメントを元に分子系統樹を構築し、分類群と生物圏の情報を統合した。Ehr は約 3 万の原核生物ゲノムに存在し、バクテリアでは 70%、アーキアでは 60% の生物門に分布し、陸圏、水圏、ヒト腸内などの様々な環境に存在することが分かった。EhrL の NiFe 活性中心形成モチーフはごく一部を除いて完全に欠失しており、EhrS の鉄硫黄クラスター形成モチーフの数に大きな多様性が見られた。EhrL の分子系統は、[NiFe] ヒドロゲナーゼおよび呼吸鎖複合体 I の両者とも異なっており、独立した系統群を形成していた。これらの結果は、Ehr が第 3 の呼吸鎖複合体I型酵素サブファミリーであり、環境微生物に広く保存され、電子伝達やプロトン輸送に関与することを示唆した。(2) 嫌気性細菌 Geobacter sulfurreducens について、マーカーレス遺伝子欠失法を用いて ehr 遺伝子欠損株の作製に成功した。電子供与体、電子受容体を変えた複数の条件で表現型解析を行ったが、現在のところ、野生株と欠損株の間に増殖速度の顕著な違いは見られていないが、凝集性などにおいてわずかな違いが観察された。欠損株が得られたことから、少なくとも、標準培地における本菌の生育には Ehr が必須でないことが分かった。
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