2021 Fiscal Year Research-status Report
バラ科サクラ属の自家不和合性に特異的な花粉側因子MGSTの機能解析
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21K20581
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
大野 健太朗 香川大学, 農学部, 助教 (10910896)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | バラ科サクラ属果樹 / 自家不和合性 / タンパク質機能解析 / グルタチオン-S-トランスフェラーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
バラ科サクラ属にはカンカオウトウやウメなどの果樹作物が含まれるが、多くはS-RNase型の自家不和合性を示すために、果実生産時には他家受粉を確保するためにコストがかかる。また、サクラ属の自家不和合性反応機構は他種のS-RNase型の反応機構と異なるとされるが、その特異メカニズムの詳細は未解明である。これら課題に対し、本研究では近年同定されたサクラ属に特異的に存在する自家不和合性因子であるMGSTに着目した。サクラ属に特異的な因子であるMGSTの分子機能の解明を介して、サクラ属に特異的な自家不和合性反応機構の解明を目的とした。 MGSTのタンパク質間相互作用解析の結果、MGSTが雌ずい側の自家不和合性因子であるS-RNaseと分子間相互作用をする結果と、一方で実験条件を変えた場合には相互作用しない結果をそれぞれ得て、再現性を確認した。この結果より、花粉由来物質の存在が両者の相互作用に必要である可能性を見出している。また、MGSTの推定アミノ酸配列から予測される酵素活性を、組換えタンパク質を作出して測定した。即ち、MGSTがグルタチオン-S-トランスフェラーゼ様タンパク質であると予想されることから、モデル基質に対してのグルタチオン抱合活性およびジスルフィド結合の還元活性を解析し、測定を行った条件においてはこれらの活性を有していないことを示した。この結果から、MGSTがこれら以外の分子機能を有する可能性を考察した。さらに、MGSTがS-RNaseのRNA分解活性を制御する可能性を仮定して酵素活性解析を行い、測定条件においてはそのような活性を有していないことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MGSTのタンパク質間相互作用解析については、条件ごとに異なる結果が複数回得られ、条件による結果の差異からMGSTの分子機能を考察できた。また酵素活性解析として、他種において比較的アミノ酸配列の類似しているタンパク質において報告のある酵素活性のうち、広く見られる活性についてはMGSTにおいても測定した。以上より、MGSTの分子機能の推定材料となる重要な知見を一定量蓄積できたと考えており、予定通りの進捗状況であるという自己評価とする。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに引き続き、主にMGSTの組換えタンパク質や花粉内生タンパク質を用いて、分子機能解析をすすめる。特に、MGSTは広義のグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)様タンパク質であるが、他の生物種において十分にアミノ酸配列の類似したタンパク質の分子機能に関する情報が不足しており、配列情報から分子機能を予測することが困難である。そこで、今後はこれまでに測定済みの酵素活性に加えて、広義のGST様タンパク質として報告のある他の分子活性についても、MGSTが有する可能性を検証する。また、in silicoでタンパク質の立体構造を予測してタンパク質機能予測をするアプローチにも有効可能性を見出している。
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Causes of Carryover |
参加を予定していた学会がオンライン開催となり、交通費や宿泊費の支払いが無くなったことが一因である。また、消耗品の購入が予定より少なく残額が生じた。残額は翌年度分に合算して,物品と成果発表旅費に使用する。
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Research Products
(3 results)