2021 Fiscal Year Research-status Report
病原菌エフェクターを認識する植物免疫受容体ネットワークの活性化動態の解析
Project/Area Number |
21K20583
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
安達 広明 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (60909513)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 免疫受容体 / NLRタンパク質 / 分子ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
植物細胞には、細胞内の異なる場所に免疫受容体(NLR:Nucleotide binding-leucine rich repeat protein)があり、それらの受容体が病原体由来の分子を認識し免疫システムを活性化させる。近年、植物のNLR免疫機構の新しい概念として、異なる機能を持つ複数のNLRタンパク質が協調してはたらき、免疫応答を誘導するNLRネットワークモデルが提唱されている。しかし、植物細胞内で複数のNLR免疫受容体が“いつ”、“どこで”活性化し、植物免疫システムを駆動するかは解明されていない。本研究では、ナス科植物に広く保存されたNLRネットワークに着目し、複数のNLRタンパク質の活性化前後の細胞内局在を調べることを目的とした。 NLRネットワークは、病原体認識に特化した“センサーNLR”と、免疫シグナルの誘導に関わる“ヘルパーNLR”によって構成されることが報告されている。本研究では、病原体認識後に複数のNLRタンパク質の細胞内局在がダイナミックに変化するという仮説を立てた。しかし、NLRが活性化すると細胞死を伴う免疫応答が誘導されるため、活性化後のNLRタンパク質の細胞内局在の変化を解析することは難しい。この問題点を解決するため、タンパク質の細胞内安定性を損なわずに細胞死誘導能を抑制したNLR変異体を作出し、細胞内局在解析の実験系の構築を進めている。ネットワークを構成する複数の免疫受容体の時空間的な細胞内ダイナミクスを明らかにできれば、長年謎に包まれている植物のNLR免疫の分子機構を理解することに繋がる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
活性化前後のNLRタンパク質の細胞内局在の変化を観察するため、野生型のセンサーNLRおよびヘルパーNLRに加え、細胞死誘導能を失った変異体のクローニングを行った。これらのNLRタンパク質の細胞内局在を解析するため、蛍光タンパク質を融合させたNLRコンストラクトの構築を進めている。 作成したNLR変異体を用いて、細胞死誘導を抑制した条件で細胞内局在解析を行うためには、内在性のヘルパーNLRをノックアウトしたモデル実験系が必須である。ナス科のモデル植物であるベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)を実験材料とし、CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集技術により内在性ヘルパーNLRを複数遺伝子ノックアウトした多重変異体植物を得ている。今年度は、ベンサミアナタバコの多重変異体系統の種子の収集、保存および細胞内局在解析の実施に向けた準備を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
準備したベンサミアナタバコの多重変異体系統に、蛍光タンパク質を融合させたNLRをアグロインフィルトレーション法により発現させる。さらに、NLRタンパク質の細胞内局在を共焦点顕微鏡下で観察し、活性化前後の細胞内動態を評価する。
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Causes of Carryover |
今年度は、実験材料の準備に主に取り組んだため、次年度使用額が生じた。次年度は、研究計画の実施に従い、植物育成、顕微鏡観察、タンパク質の生化学的解析等に関わる一般試薬、消耗品及び機器類の購入に使用する。
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