2021 Fiscal Year Research-status Report
イネいもち病抵抗性タンパク質の有する病原菌エフェクター認識部位の機能解析
Project/Area Number |
21K20586
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Research Institution | Iwate Biotechnology Research Center |
Principal Investigator |
宮路 直実 公益財団法人岩手生物工学研究センター, ゲノム育種研究部, 研究員 (60908383)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | イネ / いもち病菌 / 抵抗性タンパク質 / エフェクター / Integrated Domain |
Outline of Annual Research Achievements |
イネいもち病抵抗性遺伝子としてPias-1とPias-2のペア抵抗性遺伝子と、Pias-2によって認識されるいもち病菌エフェクターAVR-Piasが同定されている。また、Pias-2はエフェクター認識性の他のタンパク質を進化過程で獲得(Integrated Domain; ID)したと考えられており、イネを含むAゲノムに属する種のみがDUF761ドメインをIDとして持つことが明らかにされている。しかしDUF761の機能は未知であるため、Aゲノム種のPias-2のみがDUF761を獲得したことの進化的意義は不明である。本研究ではDUF761とAVR-Piasの機能を調べることで、Aゲノム種のPias-2がDUF761を獲得した理由を明らかにする。 本年度は、AVR-Piasの防御応答への作用の解明とAVR-Pias結合因子候補の同定を目指した。はじめにタグ付加AVR-Piasを過剰発現させた形質転換培養細胞を作出し、形質転換培養細胞と野生型培養細胞にMicrobe-associated molecular patterns(MAMPs)を処理し、防御応答遺伝子の発現誘導レベルを測定した。その結果、野生型と比較して形質転換培養細胞では防御応答の誘導レベルが低いことを明らかにした。ゆえにAVR-Piasは防御応答経路を抑制する機能を有することが考えられた。 次にAVR-Pias結合因子を探索するため、タグ付加AVR-Pias過剰発現培養細胞と野生型培養細胞を用いてプルダウンアッセイを実施した。泳動ゲルの銀染色により形質転換培養細胞に特異的なバンドが複数検出されたため、これらのバンドのタンパク質を同定しAVR-Pias結合因子候補とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はAVR-Piasが防御応答抑制機能を持つ可能性があることを明らかにし、AVR-Pias結合因子候補の同定に成功した。当初の計画通りにAVR-Pias結合因子候補の同定まで進んでいることから、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
AVR-Pias形質転換体のいもち病菌接種実験を行い、AVR-Piasの防御応答抑制機能についてさらに検証する。 また、プルダウンアッセイにより同定したAVR-Pias結合因子候補とAVR-Piasの結合について、Co-IP法やYeast two hybrid法などを用いて検証する。得られたAVR-Pias結合因子はイネにおいてノックアウト、過剰発現させ、いもち病抵抗性の表現型の変化を調査する。 AVR-Pias結合因子とPias-2のDUF761の結合についてもCo-IP法などで検証し、DUF761の機能解明に努める。
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Causes of Carryover |
実験が順調に進み消耗品の消費量が抑えられたこと、また学会参加にかかる旅費が生じなかったことから、本年度は当初の予定よりも予算執行額が少なくなった。次年度では、本年度の実験結果を踏まえて複数の遺伝子単離とタンパク質結合検証実験を実施する予定であり、これらの実験に必要な抗体などの購入に繰越予算を使用する計画である。
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