2021 Fiscal Year Annual Research Report
アラタ体内在性抑制因子による終齢幼虫特異的な幼若ホルモン生合成停止の分子制御機構
Project/Area Number |
21K20587
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
乾 智洋 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 契約研究員 (50911020)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 幼若ホルモン / 変態 / 脱皮 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
幼若ホルモン(JH)の変態抑制作用は昆虫に普遍的かつ特徴的な生理作用であり、昆虫の繁栄の要因の一つであることから、学術的な興味はもとより創農薬の有望なターゲットとして注目されており、その生合成やシグナル経路の解明が急務である。近年、標的細胞内でのJHシグナル経路の解明が急速に進んだが、JHの合成制御機構に関しては未解明な点が多い。幼虫期ではアラタ体でJHが盛んに合成され、JHの変態抑制作用を受けて幼虫発育が進む。そして、終齢幼虫に達するとアラタ体は突如としてJH生合成を停止し、蛹・成虫への変態が可能となる。このとき、アラタ体では後期経路の主要なJH生合成酵素遺伝子の1つであるJuvenile hormone acid Omethyltransferase(JHAMT)の発現が完全にシャットダウンすることでJH生合成が律速される。しかし、終齢幼虫期にJHAMTの発現を低下させる分子メカニズムの理解はほとんど進んでいない。 本研究では、JH生合成器官であるアラタ体内でJH生合成の主要な酵素であるJHAMTの発現を終齢特異的に抑制する遺伝子(JHAMT Repressor, JHAMT-Rep)の探索を行った。アラタ体を材料にRNA-seqによって終齢幼虫特異的に発現が上昇する遺伝子を網羅的に探索し、RNAiライブラリを作成した。コクヌストモドキを用いてRNAiスクリーニングを行うことでJHAMT-Repの候補遺伝子を突き止めた。コクヌストモドキでは、このJHAMT-Rep候補遺伝子をRNAiノックダウンすると過剰脱皮が起こった。これは体内のJH濃度が終齢で低下せず、変態できなかったためだと考えられる。本研究の成果は、前述のJHAMT-Rep候補遺伝子の同定と機能解析から、JHの生合成制御機構の解明に貢献した。
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