2022 Fiscal Year Annual Research Report
海洋性ケイ藻の環境変化に適応したCO2輸送メカニズムの解明
Project/Area Number |
21K20595
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
松井 啓晃 関西学院大学, 理工学研究科, 博士研究員 (60904109)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 無機栄養輸送 / 環境応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋性ケイ藻におけるCO2輸送体候補を探索した結果、哺乳類やバクテリアで様々な物質を輸送するSLCおよびRhタンパク質の相同タンパク質をコードする遺伝子がゲノムに多数保存されていた。先行研究より、これらのタンパク質はCO2以外に重炭酸イオン、リン酸、およびアンモニアを輸送する可能性があったため、炭素源、リン、および窒素源濃度を変化させた際の遺伝子発現量を定量的逆転写PCRにより測定した。その結果、SLC4候補遺伝子が低CO2、SLC34候補遺伝子がリン酸欠乏、Rh候補遺伝子が高CO2またはアンモニア環境で誘導された。各環境応答性から、候補タンパク質は重炭酸イオン、リン酸、CO2、またはアンモニア輸送に関与するという仮説を立てた。GFP標識した候補タンパク質を珪藻細胞に発現することで、細胞内局在を決定した結果、2つのSLC4相同タンパク質と3つのSLC34相同タンパク質は細胞膜に蛍光が観察できたが、Rh相同タンパク質を標識したGFP蛍光は確認することができなかった。 SLC4相同タンパク質を過剰発現することで重炭酸イオンの輸送が促進されたことから、既知の重炭酸イオン輸送体であるPtSLC4-2と同時に複数のSLC4ホモログが共同し、低CO2環境において重炭酸イオンを能動的に細胞内へ輸送することで高効率な光合成を維持していると考えられた。 SLC34相同タンパク質については、ゲノム編集による機能欠損体において、リン酸取り込みが顕著に低下したことから、リン酸欠乏環境におけるケイ藻の主要なリン酸輸送を担うことが明らかとなった。 Rhタンパク質候補のGFP蛍光が見られない原因として、遺伝子配列の不足が考えられた。そこで、RACE法を用いて全長配列を決定した結果、遺伝子上流に新たな開始配列が見つかった。今後、新たに取得した全長配列を用いることで、新奇輸送体の発見につながると期待される。
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