2022 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the changes in the body condition of brown bears due to the use of agricultural crops
Project/Area Number |
21K20596
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Research Institution | Hokkaido Research Organization |
Principal Investigator |
白根 ゆり 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所, 研究職員 (50911054)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | ヒグマ / 農作物被害 / 栄養状態 / 食性 / 糞内容物分析 / DNA個体識別 / 画像解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、農作物利用の有無によって、ヒグマの栄養状態がどのように異なるのかを明らかにすることを目的とした。農作物を利用しないヒグマでは、自然界の食物が不足する晩夏(8~9月)に、栄養状態が最も悪化することが明らかにされている。一方、農作物を利用する個体では、晩夏は農作物が成熟する季節であることから、この時期の栄養状態が高いのではないかと予測し、検証を行った。 2022年度は、6~10月に農地周辺(八雲町)と森林(上ノ国町)において調査を行った。八雲町で28試料、上ノ国町で136試料のヒグマの新鮮糞を採取し内容物を分析した結果、晩夏の採食物が地域間で大きく異なっており、八雲町では農作物が76%、上ノ国町では堅果・核果が84%を占めていた。また、八雲町の13地点、上ノ国町の8地点にヘアトラップを設置し、採取した体毛を用いてマイクロサテライト解析による個体識別を行った結果、それぞれ9個体、36個体が識別された。さらに、ヘアトラップに自動撮影カメラを併設し、撮影されたヒグマの横向き画像から胴長と胴高の比を栄養状態指標として算出した。その結果、上ノ国町と比較して八雲町のヒグマでは8月に栄養状態が悪化する程度が小さく、9月に回復する程度が大きい傾向がみられた。 本研究により、農作物を利用しないヒグマに比べ、農作物を利用するヒグマの方が晩夏の栄養状態が良好であることが明らかとなった。ヒグマは栄養状態が良いほど繁殖成功率が高くなるため、農作物がヒグマの栄養状態を回復させることを明らかにした本研究の成果は、農作物利用がヒグマの生息密度を高める一因となることを示唆している。
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