2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of Highly functionalization of biomass plastic materials by compounding with bottlebrush polymers
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21K20598
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
宮城 一真 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 任期付研究員 (60909266)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | バイオマスプラスチック / セルロース / ボトルブラシポリマー / 表面濃縮 / 精密重合 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、セルロース骨格を主鎖とするボトルブラシポリマー(BBP)の合成の検討を行った。主鎖にはセルロースそのものではなく、多様な溶媒に可溶かつ化学修飾が容易なヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を使用し、側鎖を汎用的なポリマーであるポリスチレン(PS)とした。 まず、あらかじめ合成した側鎖ポリマーを主鎖ポリマーにグラフトするGrafting-to法によるBBPの合成を試みた。精密重合法の一つである可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT重合)によってスチレンを重合し、PSを合成した。NMRを用いた分析により、得られたPSの重合度は57と算出された。重合に使用したRAFT剤はカルボキシ基を有するため、得られたPSは末端にカルボキシ基を持ち、カップリング反応に使用可能である。そこで次に、HPCの水酸基とPSの末端カルボキシ基のカルボジイミドカップリングを介したグラフト反応により、BBPの合成を行った。NMRスペクトルを測定したところ、HPCへのPS側鎖のグラフト効率が低いことが示唆された。BBPの機能発現には側鎖の高密度なグラフトが重要であるため、合成法の改良が必要であることがわかった。 そこで、重合開始剤を主鎖ポリマーの側鎖に導入し、そこからモノマーを重合するGrafting-from法によるBBPの合成を試みた。精密重合法の一つである原子移動ラジカル重合(ATRP)の重合開始剤とHPC水酸基の縮合反応を行った。NMRスペクトルから、HPCの繰り返し単位一つあたり1個以上の重合開始剤が導入されたことが明らかになり、重合開始剤の高密度な導入に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セルロース骨格を持つ主鎖として、セルロースそのものではなくHPCを選んだことで、溶媒への溶解や化学修飾や容易になり、BBPの合成法の選択の幅が大きく広がった。一つ目のBBP合成法としてGrafting-to法を検討し、RAFT重合により末端カルボキシ基を有するPSを合成後、HPCとのカルボジイミドカップリングを行ったが、本手法では側鎖ポリマーのグラフト効率が低いことを明らかにした。二つ目のBBP合成法としてGrafting-from法を検討し、ATRP開始剤をHPCに高効率で導入することに成功した。 以上の結果から、Grafting-from法がBBPの合成に適していることを明らかにし、当初の1年目の研究計画であったBBPの合成法の確立が進んだことから、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、まず令和3年度に確立したGrafting-from法により種々の側鎖密度および側鎖重合度のBBPを合成する。次に、合成したBBPとバイオマスプラスチックの複合フィルムを調製し、BBPの表面濃縮による複合フィルムの機能化を行う。具体的な機能として、汚れの付着を防止する自己防汚機能の付与を試みる。 BBPは、①ATRP開始剤が置換基として導入されたHPCを合成、②HPCに導入された開始剤からモノマーのATRPを行う、の2ステップから成るGrafting-from法で合成する。BBPの側鎖密度は①の反応においてHPCとATRP開始剤の仕込み量を変えることで制御し、側鎖重合度は②の反応において開始剤が導入されたHPCとモノマーの仕込み量を変えることで制御する。側鎖密度と側鎖重合度はNMRやサイズ排除クロマトグラフィー-多角度光散乱によって算出する。 合成した種々の構造のBBPと酢酸セルロース等のバイオマスプラスチックを様々な重量比で共溶媒に溶かし、シリコンウェハー等の基板にスピンコートすることで、複合フィルムを調製する。得られたフィルムにおいてBBPの表面濃縮が実現できているかを確かめるため、フィルム表面の組成を全反射赤外分光法によって測定する。さらに、フィルムが自己防汚機能を発現できるかを評価するため、フィルム表面に油滴を滴下し、フィルムを傾けた際に油滴が滑り落ちる角度(滑落角)を測定する。滑落角の測定には接触角計を用いる。
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Causes of Carryover |
当該年度はコロナウイルス感染拡大の影響で物流の停止や遅延が多く、納品困難により物品購入のキャンセルが相次いだことや、まん延防止等重点措置により出張等が困難になったことから、次年度使用額が発生した。翌年度分として請求した助成金は、当該年度に購入できなかった物品の購入に使用する予定である。
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