2021 Fiscal Year Research-status Report
ウナギの卵形成における性成熟誘導ホルモンの機能解析:ホルモン特異的な作用の解明
Project/Area Number |
21K20601
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
鈴木 博史 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(南勢), 任期付研究員 (40909636)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | ニホンウナギ / 卵成長 / 卵成熟 / 生殖腺刺激ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
ニホンウナギは、飼育環境下では自然に生殖腺が発達しないため、性成熟誘導ホルモンを投与することで、性成熟を促している。これまでの研究成果から、性成熟誘導方法の違いによって、卵質(ふ化率・生残率)や卵形成の進行速度に対して異なる影響を及ぼすことが明らかとなっている。そこで本研究では、異なる人為催熟方法で得られた卵の卵内蓄積物の網羅解析と卵形成に関わる遺伝子に着目した分析を行うことで、卵形成における性成熟誘導ホルモンの機能を明らかにする。 1)卵内蓄積物の網羅解析: 性成熟誘導のため組換え濾胞刺激ホルモン(組換えFsh)を週1回複数回投与した個体に、黄体形成ホルモン放出ホルモンアナログおよびピモジドを投与することにより内因性の黄体形成ホルモンの分泌を促し、排卵を誘発するため17α-ヒドロキシプロゲステロン(OHP)を投与する方法(方法1)および組換えFshを週1回複数回投与した個体にOHPのみを投与する方法(方法2)を用いて、卵を得た。その後、人工授精を行い、プレート法により卵質評価を行った。方法1は、方法2と比べ有意に卵質関連パラメータが高値を示した。今後は、この得られた卵を用いて、メタボローム解析およびトランスクリプトーム解析を行い、卵内蓄積物に違いがあるのか明らかにする。 2) 卵黄・油球取り込み関連遺伝子の解析: ビテロジェニン受容体(Vgr)、低密度リポタンパク受容体(Ldlr)、リポタンパク関連タンパク13(Lrp13)、リポタンパクリパーゼ1(Lpl1)およびリポタンパクリパーゼ2(Lpl2)をコードする遺伝子の単離を行った。得られたコーディング配列を用いて分子系統解析を行ったところ、得られた各配列は、それぞれ他の脊椎動物で単離されているものと同一のクラスターを形成したことから、ニホンウナギvgr、ldlr、lrp13、lpl1およびlpl2であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、「異なる人為催熟方法で卵を得ること」および「卵黄・油球取り込み関連遺伝子の単離」を予定していた。当初の予定通りに実施できたことから、自己評価を「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
1)卵内蓄積物の網羅解析:異なる人為催熟法で得られた卵の卵内蓄積物の比較のため、メタボローム解析およびトランスクリプトーム解析を行う。また、LHRHaおよびピモジド投与前後の個体より、生検により卵濾胞を単離し、トランスクリプトーム解析を行うことで、どのような遺伝子が発現変化するのか明らかにする。 2) 卵黄・油球取り込み関連遺伝子の解析:単離した遺伝子の発現解析を、リアルタイム定量PCRを用いて行うため、単離した遺伝子の測定系を確立し、各卵濾胞発達過程(前卵黄形成期、卵黄形成期初期・中期・後期、核移動期)における発現動態を解析する。
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Causes of Carryover |
出張および網羅解析に関わる消耗品等の購入予定していたが、昨今の新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、出張の中止および消耗品等が年度内納品に間に合わないと予測されたため次年度に持ち越した。そのため差額が生じた。次年度、出張および網羅解析に必要な消耗品の購入を行う。
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