2022 Fiscal Year Annual Research Report
データ寡少流域の水リスクを回避するための多目的貯水池群の統合管理プロトコルの提言
Project/Area Number |
21K20606
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
高田 亜沙里 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 研究員 (40912069)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 分布型降雨流出モデル / 貯水池操作規則の最適化 / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は「気候変動による水リスク回避のための貯水池群の統合管理プロトコルの提言」という研究目的の達成に向けて,気候変動下で起こり得る水リスクの評価手法の構築を実施した.対象流域での水需要量が最大の農業用水に着目し,気候変動により水資源量が変化した場合,および適応策として作付け時期(農業用水の利用期間)が変化した場合に,水需給バランスに対して及ぼす影響の評価手法を構築した.水資源量と農業用水の利用時期の変化による渇水リスクを回避するための貯水池群の操作規則を提示することを目指して取り組んだものである.対象流域では農業水利用に関する情報が十分に入手できなかったことから,まずはデータが豊富な日本の流域(信濃川流域)を対象に手法を構築した.水稲の収量・品質を予測する水稲生育収量予測モデルと,渇水リスクを評価する分布型降雨流出モデルに対して,同一の気象予測値と農業水利用時期を与えて実行し,気象予測値や農業水利用時期が変化した場合に,収量・品質と渇水リスクに及ぼす影響を評価した.信濃川では,品質の向上を目指して作付け時期を変化させると,渇水リスクが向上する結果が得られたことから,作付け時期の変化という適応策の実施のためには,ダムの操作方法の変更等の対応が必要となる可能性が示された. 研究期間全体を通じて,貯水池群の貯水・放流操作を表現可能な分布型降雨流出モデルと貯水池の操作規則の最適化手法を構築でき,気候変動下における水資源量・水利用の変化に関する検討も行なったことから,研究計画で想定した水リスクのうち「渇水」の回避に向けた貯水池群の統合管理の提案の準備は概ねできている.一方で,「洪水」に関しては,本研究期間で十分な検討ができなかったことから,今後は貯水池群の下流域の洪水リスクの評価モデルの構築を行い,渇水と洪水の両リスクに対して有効な貯水池群の統合管理手法の提案を目指していく.
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