2021 Fiscal Year Research-status Report
鳥インフルエンザウイルスの迅速な塩基配列解析法の開発
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21K20610
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
奥谷 公亮 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 助教 (10907736)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 鳥インフルエンザウイルス / ナノポアシークエンサー / 疫学調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
鳥インフルエンザウイルスは、性状の違いから国際的に高病原性および低病原性鳥インフルエンザウイルスに分類されており、高病原性鳥インフルエンザウイルスによる家禽農場の経済被害は特に甚大である。鳥インフルエンザウイルスは8分節のRNAをゲノムに持ち、遺伝子再集合により、遺伝学的に多様なウイルス株が出現する。そのため、流行株を把握するためには、鳥インフルエンザウイルスの全遺伝子分節の解析が重要である。本研究は、鳥インフルエンザウイルスの全遺伝子分節を標的にした塩基配列解析法を確立し、流行株の性状変化を迅速に検出することを目的とした。 本研究では、遺伝子解析時間が短く、安価なナノポアシークエンサーFlongleを用いて、鳥インフルエンザウイルスの全遺伝子分節を同時に解読する手法を疫学調査に導入した。まず、環境水や野鳥のスワブ検体を発育鶏卵に接種し、鳥インフルエンザウイルスを増殖させ、ウイルス遺伝子を抽出する。各遺伝子分節をPCR法により増幅した後、分離株毎に異なるバーコード配列を付加することで、複数株の全遺伝子配列を一度に解読することが可能となった。 2021/22年越冬シーズン、鹿児島県出水市のツルのねぐらの水から鳥インフルエンザウイルス78株が分離され、本手法により、速やかに全遺伝子分節の塩基配列が決定された。分離株の内11株はH5N1もしくはH5N8亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルスであった。全遺伝子分節の解析から、H5N1亜型とH5N8亜型のウイルスは各々独立して進化したことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、ナノポアシークエンサーFlongleを用いて、鳥インフルエンザウイルス分離株の全遺伝子分節を迅速に解析する系を構築した。また、分離株毎に異なるバーコード配列を付加することで、複数株の鳥インフルエンザウイルスを一度に解読できた。本遺伝子解析法を鹿児島県出水市のツルのねぐらの水からの鳥インフルエンザウイルスの疫学調査に組み込み、鳥インフルエンザウイルスの流行シーズン中にも、効率良く分離株の全遺伝子解析を進めることができた。分離された鳥インフルエンザウイルスの内、高病原性鳥インフルエンザウイルスの各遺伝子分節の由来を解析し、複数の遺伝子型のH5亜型ウイルス株が日本国内に侵入したことを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
過去に鹿児島県出水市のツルのねぐらの水から分離された鳥インフルエンザウイルスの内、内部遺伝子が解析されていない分離株が多く保存されている。過去の分離株についても全遺伝子解析し、日本国内に侵入したウイルス株の遺伝子構成の変化を明らかにする。
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Research Products
(1 results)