2021 Fiscal Year Research-status Report
線維芽細胞増殖因子23を標的とした新規線維症治療戦略の構築
Project/Area Number |
21K20613
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三原 大輝 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (70908326)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 線維化 / 肝臓 / 線維芽細胞増殖因子23 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は肝線維化の一端をFGF23-FGF受容体 (FGFR) シグナルが担うという仮説に基づいて行われているものである。 今年度は四塩化炭素の継続投与による肝線維症モデルに対し、FGFR阻害薬が示す効果に関する検討を主に行った。四塩化炭素の継続投与は8週にわたり行い、一般的に用いられる週2回、1 ml/kgの濃度での腹腔内投与という条件で行った。FGFR阻害薬としてPemigatinibを使用した。8週後に安楽死処置を行い、肝臓および血清を採材した。肝臓においては線維化の進行をコラーゲン量を定量できるマッソントリクローム染色およびヒドロキシプロリンアッセイにより評価し、血清においてはALT, ASTといった肝数値の測定を行った。マッソントリクローム染色は肝臓のパラフィン包埋を行い、ミクロトームで薄切した後に行った。ヒドロキシプロリンアッセイでは採取した肝臓を塩酸を用いて加水分解し、コラーゲンからヒドロキシプロリンを生成した後、それに対する呈色反応を行うことでコラーゲン定量を行った。血清を用いた血液性化学検査はオリエンタル酵母株式会社への外注検査によって行った。 四塩化炭素処置により、肝臓におけるコラーゲン量は顕著に増加し、血清における肝数値も顕著に増加した。これらは肝線維症モデルが正しく作製されていることを示している。FGFR阻害薬Pemigatinibによりこれらの増加が抑制される傾向を認めた (P=0.07)。 以上から、肝線維化シグナルの一端をFGFRが担っていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は肝線維化の一端をFGF23-FGF受容体 (FGFR) シグナルが担うという仮説に基づいて行われているものである。 今年度は四塩化炭素の継続投与による肝線維症モデルに対し、FGFR阻害薬が示す効果に関する検討を主に行った。四塩化炭素の継続投与は8週にわたり行い、一般的に用いられる週2回、1 ml/kgの濃度での腹腔内投与という条件で行った。FGFR阻害薬としてPemigatinibを使用した。8週後に安楽死処置を行い、肝臓および血清を採材した。肝臓においては線維化の進行をコラーゲン量を定量できるマッソントリクローム染色およびヒドロキシプロリンアッセイにより評価し、血清においてはALT, ASTといった肝数値の測定を行った。マッソントリクローム染色は肝臓のパラフィン包埋を行い、ミクロトームで薄切した後に行った。ヒドロキシプロリンアッセイでは採取した肝臓を塩酸を用いて加水分解し、コラーゲンからヒドロキシプロリンを生成した後、それに対する呈色反応を行うことでコラーゲン定量を行った。血清を用いた血液性化学検査は外注検査によって行った。 四塩化炭素処置により、肝臓におけるコラーゲン量は顕著に増加し、血清における肝数値も顕著に増加した。これらは肝線維症モデルが正しく作製されていることを示している。FGFR阻害薬Pemigatinibによりこれらの増加が抑制される傾向を認めた。 以上から、肝線維化シグナルの一端をFGFRが担っていることが示唆された。 本年度で肝線維症のモデル作製とFGFR阻害薬Pemigatinibの投与プロトコルの決定まで行う予定だった。予想外にも、これらのプロトコル決定に加え、Pemigatinibの抗線維化効果まで検証することができた。ただ有意な結果までは得られず、傾向をつかむに留まったことから、本年度はおおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度ではin vivoの解析において、FGFR阻害が肝線維化抑制効果を示す傾向が得られた。来年度はこの傾向を有意なものとし、科学的かつ統計的根拠を以て肝線維化抑制効果を主張するに足るデータを得られることを第一の目的とする。 さらに肝臓構成細胞を用いたin vitroの検証も行い、如何なる細胞にFGFRが発現しているのか、これらにFGF23を処置することでコラーゲン産生が促進されるのか、さらにはコラーゲン産生に至るシグナルは何かを分子生物学的アプローチから解明することを第二の目的とする。
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Causes of Carryover |
研究の進行状況が申請時の予定と変わっており、RNA-seq解析などの高額解析、細胞培養などの継続的な実験、中和抗体などの高額試薬の購入などが全て次年度に行う予定に変更された。そのため、次年度使用額が生じることとなった。
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