2022 Fiscal Year Annual Research Report
線維芽細胞増殖因子23を標的とした新規線維症治療戦略の構築
Project/Area Number |
21K20613
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三原 大輝 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (70908326)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 肝臓線維化 / 線維芽細胞増殖因子23 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝臓線維症はあらゆる肝臓疾患で生じ得る重要な病態であり、肝がんや門脈圧亢進症といった致死的な疾患の原因となる。本研究では肝臓線維症に対する線維芽細胞増殖因子23 (FGF23) の新規治療標的の可能性を検証した。本因子は心臓や腎臓の線維化に関与する因子であることが近年報告されているが、肝臓への影響を検証した報告は未だされていない。また、肝臓線維症は効果的な治療標的が未だ特定されていないため、本研究の社会的重要性は高い。 まず四塩化炭素を用いた肝臓線維化モデルマウスの血清中でFGF23量が顕著に増加することを見出した。次に、肝臓線維化を主に担う肝星細胞にFGF23を添加し、RNAシーケンス解析を行った結果、Matrisome産生に関与する遺伝子群の発現が顕著に増加した。Matrisomeは細胞外マトリクスの形成を促進するタンパク群である。FGF23が肝臓線維化の促進に関与すると仮定し、FGF23の作用を阻害するため、FGF受容体阻害薬pemigatinibを肝臓線維化モデルマウスに投与した結果、肝臓におけるコラーゲン量が有意に減少し、それに伴ってASTなどの肝数値の値も有意に改善された。 以上から、FGF23-FGF受容体シグナルは肝臓線維症に対する新規治療標的になり得ることが見出された。FGF23は線維化領域で着目され始めている因子であり、本研究で得られた知見は今後の研究の足掛かりになることが期待される。
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