2021 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of new therapeutic strategy using afatinib in canine head and neck squamous cell carcinoma.
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21K20619
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
宮本 良 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, ポストドクター (30822580)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 犬 / 扁平上皮癌 / アファチニブ / 分子標的薬 / 分子標的療法 / 個別化 / ドライバー / SCC |
Outline of Annual Research Achievements |
人および犬の頸部扁平上皮癌 (HNSCC) は、切除不応の場合では有効な治療法がない。この為、HNSCCに対する新たな治療戦略の確立が世界的に重要な課題となっている。申請者はこれまで分子標的薬アファチニブが犬HNSCC細胞に対して抗腫瘍効果を示すことを明らかにした。しかし、その為には犬HNSCCにおけるアファチニブの作用機序を解明する必要がある。これまで申請者は作用機序解明の鍵となる分子Xの特定に成功しているが、これが治療標的かは未だ不明である。 そこで当該年度では、まず犬のHNSCC細胞を用いてドライバー分子Xにおける遺伝子変異の有無を解析した。次いで、蛋白質レベルにおいて分子Xの過剰発現あるいは異常なリン酸化状態の有無について解析した。これらの解析結果から、アファチニブ感受性HNSCC細胞において分子Xはドライバー遺伝子変異を持たないが、他の株化細胞と比べてリン酸化レベルの増強が著しいことが明らかとなった。この為、分子Xのリン酸化増強の原因を解析するために、分子Xをリン酸化するパートナー蛋白質である分子Yの発現状態を解析した。その結果、分子Yはアファチニブ感受性HNSCC細胞のみで強く発現していることを明らかにした。 当該年度ではアファチニブの臨床的有用性を検討する為に、犬HNSCC症例を対象としたアファチニブの臨床試験を行っており、現在も継続中である。今のところ目標症例数には到達していない為、さらに症例数を増やした結果を報告する予定である。 また当該年度は臨床症例におけるドライバー分子Xの検出法の確立についても着手しているが、ドライバー遺伝子変異ではなく蛋白質レベルの異常である為、免疫染色を用いた検出法を試している。今のところヌードマウスに感受性HNSCC細胞を移植した腫瘍組織においてリン酸化分子XおよびYの高発現を確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では、分子Xがドライバーとなることを明らかとした。さらに、そのメカニズムについても既に解析を進めており、HNSCC細胞の新たな増殖機構の鍵が分子XおよびYの両方に関わることを明らかとした。今後はこれらの関連性について解析していく予定である。 一方で、臨床試験についてはまだ目標とする症例数が集まっていない為、さらに症例数を増やす必要がある。個別化治療の為には分子XあるいはYを事前に検出する検査法の確立が必要であるが、マウスモデルにおいては免疫染色による方法が成功していることから、今後は臨床試験における症例の組織サンプルでも試行していく予定である。 これらのことから、当該年度の目標としていた分子Xについての解析についてはおおむね終了しており、さらに次年度の目標である検査法確立についてもおおむね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、アファチニブ感受性HNSCC細胞における分子XおよびYの関連を解析しつつ、臨床試験症例数の増加を目標としている。XおよびYの分子機構については、ウイルスベクターを用いたノックダウンにより、これら分子の発現レベルの低下が細胞の生存率に及ぼす影響を現在解析中である。この結果に基づいて、より良い検出法を確立できるか検討する。 臨床試験については適応となる症例に対し、積極的にオーナーにインフォームすることで症例数増加を目指すこととしている。
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Causes of Carryover |
当該年度では、臨床試験の治療薬の費用を確保していた。そのうちほとんどを使用することができたが、予定していた症例数に到達することができなかった。しかしながら、翌年度においても臨床試験は継続していく予定である為、翌年度で使い切る予定である。 また、研究結果を学会で発表する為の費用としても確保していたが、新型コロナウイルス感染症の影響により予定していた学会が中止となってしまった為、使用できなかった。もし翌年度でも中止あるいは延期となるようであれば、論文の文章校正費用として使用する予定である。
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