2021 Fiscal Year Research-status Report
細胞メカノセンシング機構における微小管情報伝達の役割
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21K20620
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西村 有香子 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教 (90360619)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | メカノセンシング / 接着斑 / 微小管 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の研究により、細胞には外環境の機械的性質や力作用を感知し応答するメカノセンシング機構があることが示されている。これらの力学刺激が、細胞メカノセンシングの中核を担う「細胞接着斑」の構造と機能を制御するメカニズムの理解は未だに不足している。これまでの研究により、細胞骨格の微小管が接着斑と相互作用し、接着斑の形成と崩壊を制御することを明らかにしてきた。本研究では、この微小管-接着斑クロストークのメカノセンシングにおける役割解明を目指す。 初年度は、微小管と接着斑の連結を人為的に阻害・誘導するための光遺伝学技術を導入したツールを作製した。このツールを実際に細胞内に導入し、顕微鏡下の光照射によって細胞内局所で微小管と接着斑の相互作用を操作できるか検討している。それに加え、細胞外基質の微細加工によって「メカノセンシングに依存した細胞移動」を誘導できる実験系を構築し、メカノセンシング移動中における微小管と接着斑のダイナミクスを高解像度で観察するための条件検討を行なっている。また、微小管-接着斑連結の下流で作用するシグナル伝達経路を同定する目的で、微小管結合能を持つRhoA活性化因子GEF-H1の活性化メカニズムについて解析している。微小管上におけるGEF-H1の局在を詳細に観察するため、一分子レベルでの計測を行ったところ、GEF-H1が微小管から結合・解離する様子に加えて、微小管上を滑る様子が観測できた。今後は、GEF-H1分子の動態を、外部から機械的刺激を与えた細胞内でも観察することで、メカノセンシングとGEF-H1の連携における時空間制御機構を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メカノセンシングにおける微小管-接着斑連結構造の機能解析 現在、硬軟度の違いを持つ細胞外基質を特定の幾何学パターンで作成し、メカノセンシングで誘導される細胞移動の観察を試みている。九州大学・木戸秋悟博士との共同研究を締結し、durotaxis(細胞がやわらかい基質から硬い基質に移動する性質)を効率よく誘導できる細胞外基質パターンの構築を試みている。これまでに、細胞種の選定、メカノセンシング反応が見られる細胞外基質の条件、ライブイメージング条件を検討した。また、分子生物学的手法により、微小管と接着斑の連結を人為的に阻害・誘導するための光遺伝学の技術を用いたツールを作成した。今後、このツールを細胞に導入し、光照射によって実際に細胞内局所における微小管-接着斑の連結の崩壊や形成を誘導できるか検討する。
微小管-接着斑連結構造の下流シグナル伝達経路の同定 微小管結合能を持つRho GTPase活性化因子GEF-H1の局在機構について明らかにする目的で、微小管上におけるGEF-H1の局在を詳細に観察した。顕微鏡下での一分子計測により、GEF-H1が微小管から離れたりついたりする様子や、微小管上を滑る様子が観測できた。実際に細胞に機械的刺激を与えたり、微小管ダイナミクスを変化させた時の微小管上におけるGEF-H1の一分子ダイナミクスを観測し、比較・解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
高速高解像度ライブイメージングにより、durotaxis中の細胞で、微小管と接着斑の局在と動態、微小管先端と接着斑の共局在性(微小管-接着斑の連結)について検証する。接着斑因子の発現抑制や微小管阻害剤などにより連結を人為的に阻害した細胞において、durotaxisのパターンがどう変化するかを検証し、メカノセンシングにおける微小管-接着斑連結の役割を理解する。また、作成した光遺伝学の技術を導入したツールを実際に細胞内に導入し、顕微鏡下の光照射によって細胞内局所で微小管と接着斑のダイナミクスを誘導できるかどうか検討する。さらにdurotaxis中の細胞に対し、光照射によって細胞内局所における微小管-接着斑の連結の崩壊や形成を誘導することで、細胞移動の方向がどのように変わるかを検証する。 微小管上におけるGEF-H1の局在について、その詳細な分子ダイナミクスの解析後、硬軟度勾配を示す細胞外基質や外部環境の機械的伸展刺激を介して細胞内微小管に張力や圧力といった力学的な刺激を与えた時の、微小管上におけるGEF-H1の動態を検討する。また、微小管脱重合剤、重合促進剤、微小管結合タンパク質の機能阻害を行い、重合状態を変化させた微小管上のGEF-H1の動態についても検討する。GEF-H1の微小管への結合必須条件を明らかにした後は、GEF-H1の細胞内活性をFRETセンサーを用いて可視化することで、GEF-H1の微小管親和性とGEF活性との関連性を解析する。
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Causes of Carryover |
本年度で実験に必要な設備及び消耗品を購入したが、購入額が見積もっていた額よりも若干少なかった。当該助成金は、翌年度分と合わせ、消耗品の購入に充てる予定である。
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