2022 Fiscal Year Research-status Report
低分子量熱ショックタンパク質の新機能:翻訳制御における制御ターゲットの探索
Project/Area Number |
21K20631
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
三輪 つくみ 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 研究員 (70912179)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 大腸菌 / 低分子量熱ショックタンパク質 / 翻訳制御 / 熱ストレス応答 / IbpA / σ32 |
Outline of Annual Research Achievements |
ストレスによって生じるタンパク質凝集(凝集体)は蓄積することで細胞毒性を示す場合がある。凝集体の処理にあたるのがシャペロンである。シャペロンの中でも低分子量熱ショックタンパク質 (small Heat shock protein; sHsp)は凝集体処理の初期ステップである凝集体の隔離を担っている。最近の応募者の研究から、大腸菌のsHspであるIbpAはシャペロンとしての機能以外に、mRNAとの結合を介して自身の発現制御機能も有していることがわかった。本研究ではIbpAによる新規発現制御ターゲットの探索を通じ、IbpAの発現調節因子としての生理的意義を明らかにすることを目的としている。前年度において質量分析を用いた大腸菌プロテオーム解析によりIbpA過剰発現が複数のHspの発現減少を引き起こすことが示された。次いで行った解析により、IbpAは大腸菌熱ショック転写因子σ32の発現を翻訳段階で抑制することが示された。当該年度ではIbpAによるσ32発現制御の生理学的意義を検証した。その結果、IbpAを過剰発現させることでσ32が正常に熱ストレス応答できなくなること、IbpAを欠損させることで熱ストレス時のσ32量の厳密な制御が行われなくなることが示された。次いで行った解析により、IbpA量の以上による非正常な熱ストレス応答はσ32制御下にあるHsp発現制御にも影響する事が示された。さらに、IbpA量の異常は大腸菌が熱ストレスから解放された後の生育回復にも影響しており、IbpAを介したσ32量の厳密な調節が大腸菌の熱ストレス応答、およびストレスからの回復に重要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画で予定していた質量分析によるスクリーニングは順調に進行し、新規制御ターゲットの探索を達成した。さらにIbpAによるターゲット発現制御の生理学的意義の特定まで行うことができた。その一方でRNAシークエンス解析を用いたターゲット候補のスクリーニングに関しては進行途上の段階にあり、質量分析を用いたスクリーニングと比較して進行度が遅いと言える。これらのことから、本研究の目的達成に順調に近づきつつあるものの、全工程において当初の予定通りとは言えないと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
質量分析を用いたスクリーニングにおいてはターゲットの特定まで進行し、生理学的意義の解明も含めたこらまでの内容は論文投稿段階まで進行した。 RNAシークエンスを用いたスクリーニングについては予備実験が終了しているため、実際にサンプル調製、スクリーニングを行い、当初通りの計画を進行する予定である。しかし、シークエンス解析の結果から特定の機能を有する集団が見いだされた場合は生理学的意義の解明と個別解析によるターゲットの特定を並行して行う可能性もある。
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Causes of Carryover |
当初、大幅に予算を割く予定でいたRNAシークエンスを用いたスクリーニングが準備段階であったため。次年度使用額はRNAシークエンスに用いる予定である。
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