2021 Fiscal Year Research-status Report
KIF1Cモータータンパク質を介した浸潤突起伸長の分子機構解明
Project/Area Number |
21K20641
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
佐事 武 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (90906281)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | KIF1C / c-Src / PTPD1 / 浸潤突起 / Arl8b |
Outline of Annual Research Achievements |
浸潤突起は高浸潤性がん細胞に認められる細胞膜突起構造であり、細胞外気質を分解しながら伸長することで、がん細胞の浸潤を駆動する。しかし、浸潤突起の伸長・成熟する仕組みはほとんど解明されていない。申請者は、非受容体型チロシンキナーゼc-Src(c-Srcキナーゼ)とキネシンモータータンパク質KIF1Cが成熟した浸潤突起にて得意的に共局在することを発見した。また、c-SrcキナーゼがKIF1Cのストークドメイン内の4つのチロシン残基をリン酸化することを見出した。近年の報告から、KIF1Cはモータードメインとストークドメインが分子内相互作用することで自己抑制されており、チロシンホスファターゼPTPD1がKIF1Cのストークドメインに結合することでKIF1Cの自己抑制が解除され、KIF1Cが活性化することが示されている。そこでc-SrcによるKIF1Cのリン酸化がPTPD1を介したKIF1Cの活性化に与える影響について検討した。その結果、KIF1Cはc-Srcによってリン酸化されることによってPTPD1との結合が亢進し、微小管上へのリクルートが促進されることが示された。また、c-SrcによるKIF1Cのリン酸化は浸潤突起の伸長・成熟に必要であることも明らかにした。さらに申請者は、KIF1Cの輸送カーゴ分子の候補としてリソソームの細胞内局在に関わるArf様低分子量GTPaseのArl8bがKIF1Cと結合することを見出した。3次元培養下で観察される伸長した浸潤突起先端において両者は得意的に共局在する様子が認められた。また、siRNAを用いたKIF1Cの遺伝子発現の抑制は、細胞内Arl8bの局在に影響を与えることが明らかになった。以上の結果より、KIF1CはArl8bとの相互作用を介してリソソームを浸潤突起へと輸送し、その伸長過程において重要な役割を担っている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度の研究により、c-SrcによるKIF1Cのリン酸化および活性化を介した浸潤突起の伸長について詳細な分子機構の解明を明らかにした。また、その輸送カーゴ分子としてArl8bとの相互作用に着目し、リソソームが浸潤突起の伸長において重要な役割を担っている可能性が示唆された。これらの解析結果は論文作成に向けた大きな成果であるため、本課題はおおむね順調に進んでいると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度はKIF1CとArl8bとの相互作用に着目し、より詳細な結合ドメインの解析やリソソームが浸潤突起形成過程においてどのように作用し、その伸長・成熟を促進するのかについて解析を進めていく予定である。また、リソソームの細胞内局在への変化は、mTORシグナルの制御による局所的なタンパク質翻訳への影響に深く関わっていることが知られていることから、新たな浸潤突起の伸長・成熟に関する制御機構についても見出していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
令和3年度は、乳がん細胞株を主に用いて研究が進展したため、他のがん細胞株での実験は殆ど実施しなかった。そのため、当初購入予定の消耗品を購入する必要がなかったため次年度使用額が生じた。令和4年度は、これまでの細胞株以外のがん細胞株での実験も行うため、その実験に必要な消耗品に当該次年度使用額を使用する予定である。
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