2021 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫疾患のリスク多型の機能を制御する転写因子の探索
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21K20647
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
石垣 和慶 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (00790338)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | リスク多型 / アレル特異的発現解析 / 自己免疫疾患 / ゲノムワイド関連解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己免疫疾患の発症リスクの30-40%はゲノム配列の個人差(多型)により決定される。遺伝子多型情報の個人差をヒト集団の中で解析するゲノムワイド関連解析は、ノックアウトマウス実験と同様に疾患の原因を議論できる解析法であり、自己免疫疾患のリスク多型を多数同定している。大半のリスク多型は遺伝子発現調整領域に局在し、近傍にある遺伝子の発現調整の異常を介して疾患リスクを高めると推定されている。そして、その多型の機能は疾患特異的な転写因子により制御されると考えられている。しかし、具体的にどの転写因子がリスク多型の機能を特異的に制御しているのかを実験的に確認した例は極めて数なく、自己免疫疾患の病態解明のボトルネックとなっている。 本研究の目的は、①自己免疫疾患のリスク多型の機能(=遺伝子発現制御)を効率的に定量評価する実験系を確立し、②転写因子ノックアウトの実験を併用することで、どの転写因子がリスク多型の機能を制御しているかを実験的に確認することである。本研究により自己免疫疾患の病態で中心的な役割を担う転写因子を同定できると期待される。 初年度(R3年度)は、目的①を達成するために、ATAC-seqの実験システムを用いたアレル特異的解析の実験系を開発した。アレル特異的解析はリスク多型の機能を“アレル比”というシンプルな指標で評価する効率的な実験系である。本研究成果として、正確なアレル比が計算できる実験・解析アルゴリズムが完成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アレル特異的解析の解析対象となる自己免疫疾患のリスク多型(BLK領域のrs2061831など)の選定が終了した。ATAC-seqの実験システムを完成させた。リスク多型をヘテロで周する細胞株を用いてATAC-seqを実施し、リスク多型を含むゲノム断片をPCR増幅して、次世代シーケンサー用のライブラリーを作成する実験プロトコルを完成させた。次世代シーケンサーのデータの中でリスク多型の両アレル由来のリードを区別する解析アルゴリズムを完成させた。以上の研究成果として、正確なアレル比が計算できる実験・解析アルゴリズムが完成した。
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Strategy for Future Research Activity |
Unique molecular identifier(UMI)をライブラリーに付加する実験システムを開発する。UMIの付加によって、アレル比計算を更に正確に計測できるようになると期待される。また、目的②を達成するために、Crispr-Cas9のシステムを利用した転写因子ノックアウトの実験システムを構築する。
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