2021 Fiscal Year Research-status Report
糖転移酵素変異株を用いた植物におけるアラビノガラクタンプロテインの新規機能探索
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21K20653
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大西 真理 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (50377793)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | アラビノガラクタンプロテイン / 原形質連絡 / 細胞壁 / 気孔 / 糖転移酵素 / 糖鎖 / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
アラビノガラクタンプロテイン(Arabinogalactan protein : AGP)は植物特有の細胞外プロテオグリカンファミリーであり、植物において様々な重要なプロセスに関与しているが、分子数が多く重複性が高いため機能解析が困難である。AGPは大きな糖鎖を有しており、この糖鎖が活性に重要である。 本研究ではAGPの糖鎖修飾の第一段階を担う糖転移酵素群Hydroxyproline O-galactosyltransferases (HPGT1, HPGT2, HPGT3)の多重変異株をAGPの機能抑制株として用い、新たなAGPの分子機能の解明を目的としている。 本年度はまず、hpgt1,2,3三重変異株の詳細な表現型解析を行い,AGPが重要な働きをしている可能性がある部位の探索を行った。その結果、hpgt1,2,3三重変異株において葉の気孔のクラスター化率が増加することが明らかとなった。これは、AGPの変異株等の解析では報告がなく、AGP関連における新規の表現型であった。この気孔のクラスター化をもたらす原因を更に探ったところ、葉の原形質連絡の構造が異常に複雑化しており、シンプラスト輸送が増加していることも明らかとなった。hpgt1,2,3三重変異株における気孔のクラスター化の増加はこのシンプラスト輸送の制御が異常になることで、気孔のパターン化に関わる因子を適切に制御できなくなっているためであると考えられた。 また、野生株とhpgt1,2,3三重変異株において細胞壁の比較分析を行ったところ、変異株の細胞壁において細胞壁の組成が変化しており、これらの変化が原形質連絡の複雑化の要因となっていると考えられたことから、AGPは正常な原形質連絡の形成に重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当年度は気孔のクラスター化の促進というこれまでAGPに関する研究において報告のなかった新規表現型を見つけることができた。また、クラスター化の促進の要因となる細胞壁組成の変化に伴う原形質連絡の構造異常などを明らかにすると共にAGPが原形質連絡の形成に重要であるという新たな知見を得ることができた。 また、hpgt1,2,3三重変異株を用いたトランスクリプトーム解析やリン酸化プロテオミクス解析にも着手することができた。リン酸化プロテオミクスに関しては変異株に対するAGPの投与サンプルの解析までは至らなかったが、その他は順調に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はAGPが細胞壁に与える影響を更に詳しく解析していく。また、hpgt1,2,3三重変異株で変化が見られたトランスクリプトーム及びリン酸化プロテオミクスのデータ解析を行うことでAGPの細胞壁・原形質連絡に与える分子メカニズムの解明や新たな表現型探索に繋げていきたいと考えている。 また、ヤリブ試薬やAGPを投与したリン酸化プロテオミクスを早急に行い、AGPが関わる情報伝達系の探索を進めていく。
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Causes of Carryover |
学会や研究会等がオンラインになったため、予定していた旅費が発生しなかったため。また、リン酸化プロテオミクスの準備が当初の予定より遅れたこともあり、次年度に当初予定していたものを合わせて行うため、その分の予算もそちらで使用する予定である。
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