2021 Fiscal Year Research-status Report
細胞競合の上流メカニズムを司るオートファジー誘導機構の解析
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21K20654
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永田 理奈 京都大学, 生命科学研究科, 特定研究員 (80912493)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞死 / オートファジー / 細胞間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内で隣接する2つの細胞間にわずかな性質の差が生じた際、細胞間相互作用を介して一方の細胞に細胞死が誘導される現象が存在する。この現象は「細胞競合」と呼ばれ、組織に残って生存する細胞を「勝者」、細胞死によって排除される細胞を「敗者」と呼ぶ。申請者らはこれまでに、敗者細胞の細胞死は細胞非自律的なオートファジー誘導によって引き起こされることを明らかにした。そこで本研究では、勝者細胞に近接する敗者細胞でどのようにしてオートファジーが活性化されるのかを明らかにすることで、これまで不明であった細胞競合の上流メカニズムの解明を目指す。令和3年度では、敗者細胞のオートファジー誘導には、勝者-敗者細胞間のタンパク質合成能の差が重要であることを報告した(Nagata et al., Curr Biol, 2022)。具体的には、Hippo経路変異細胞(勝者)ではYkiのターゲットであるmiRNA bantamを介してTOR経路が活性化しており、これによるタンパク質合成の上昇が周囲の正常細胞(敗者)のオートファジー依存的な細胞死を引き起こすことがわかった。さらには、勝者細胞に近接する敗者細胞でどのようにしてオートファジーが誘導されるかを明らかにするための遺伝学的スクリーニングを行い、オートファジー誘導に必要な分子群を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、勝者細胞に近接する敗者細胞でどのようにしてオートファジーが活性化されるのかを明らかにすることを目的とする。令和3年度は、Hippo経路変異によって引き起こされる細胞競合メカニズムを解析した結果、勝者細胞ではYkiのターゲットであるmiRNA bantamを介してTOR経路が活性化しており、これによるタンパク質合成の上昇が周囲の敗者細胞のオートファジー依存的な細胞死を引き起こすことがわかった。重要なことに、bantamは細胞競合を引き起こすのに十分であることもわかった。さらには、勝者細胞に近接する敗者細胞でオートファジーが誘導されるメカニズムを明らかにするための遺伝学的スクリーニング行った結果、オートファジー誘導に必要なシグナルを同定することに成功した。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、申請者らが独自に見出したbantamをモデルとして用い、勝者細胞のタンパク質合成の上昇がどのようにして敗者細胞のオートファジーを誘導するかを遺伝学的解析により明らかにする。さらに、遺伝学的スクリーニングにより見いだした細胞非自律的オートファジー誘導に必要な分子群について、それらの役割と動作機序を遺伝学的に解析する。
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Causes of Carryover |
遺伝学的スクリーニングに重点を置いたため、免疫染色による遺伝学的解析を次年度に回した。今年度は、これまでの予定に加えて初年度に行う予定であった免疫染色を行う。
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