2022 Fiscal Year Annual Research Report
摂食行動を制御する視床下部神経ペプチドの性差形成機構の解明
Project/Area Number |
21K20659
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
森下 雅大 日本医科大学, 医学部, 助教 (10909063)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 神経内分泌 / 性ホルモン / 性差 / 神経ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
げっ歯類の摂食行動やエネルギー代謝には性差がある。摂食行動やエネルギー代謝の制御には、視床下部に発現する神経ペプチドが重要な役割を担っているが、神経ペプチドの性差には不明な点が多い。 令和3年度は、マウスの視床下部において新たに発見され、摂食行動や脂質合成を促進する作用がある神経ペプチド(Neurosecretory protein GL, NPGL)に着目し、遺伝子発現量の性差を調べた。その結果、成熟雌雄マウスにおけるNPGLの発現量には雄優位な性差があることが明らかになった。一方で、胎仔期、新生仔期および春機発動期の仔マウスにおけるNPGLの発現量に性差は無かった。次に、成熟期に生殖腺を切除した雌雄マウスを用いて遺伝子発現を解析したところ、精巣を切除した雄マウスではNPGLの発現量が雌マウスと同程度まで減少した。一方で、卵巣を切除した成熟雌マウスでは、NPGLの発現量に影響はなかった。以上のことから、成熟期の雄マウスにおいて、精巣ホルモンはNPGLの発現を促進することが示唆された。 令和4年度は、NPGLの発現量に及ぼす性ステロイドホルモンの影響を検討した。その結果、雌性ホルモンであるエストラジオールと、雄性ホルモンであるテストステロンおよびジヒドロテストステロンにNPGLの発現量を増加させる作用があることが明らかになった。また、性ステロイドホルモン受容体の発現解析の結果、マウスにおいて核内転写調節因子として働くエストロゲン受容体にはα型とβ型が存在するが、NPGLが豊富に発現する弓状核にはβ型の発現は無く、α型のみ発現することが明らかになった。以上の事から、成熟期の雄マウスにおいて、精巣ホルモンはアンドロゲン受容体とエストロゲン受容体αを介してNPGLの発現を促進することによって、摂食行動や脂質合成を亢進することが示唆された。
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