2022 Fiscal Year Annual Research Report
群体性ボルボックス目緑藻精子束から解き明かす多数の真核生物鞭毛の協調運動
Project/Area Number |
21K20661
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
鹿毛 あずさ 学習院大学, 理学部, 助教 (10748809)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 真核生物鞭毛 / 集団運動 / メタクロナルウェーブ / 遊泳 / 有性生殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、群体性ボルボックス目緑藻Pleodorina starrii精子束の運動の定量的記載を行った。前年度は単体精子と無性群体の鞭毛運動をハイスピードカメラで記録・解析したが、これに加えてマイクロピペットで精子束を捕らえ、精子束の状態での鞭毛運動を詳細に解析した。 前年度までに単体精子は鞭毛打タイプの運動を示すことを明らかにしていたが、精子束の鞭毛は繊毛打タイプの運動を示した。このことは、精子束が解離して単体精子になるとともに、鞭毛運動が繊毛打から鞭毛打に切り替わる何らかのメカニズムの存在を示唆している。鞭毛運動の周期は単体精子・無性群体よりも精子束の鞭毛で長かった。 キモグラフで解析したところ、精子束の鞭毛運動は中心部分から側方に波として伝わっていることがわかった。鞭毛の有効打も中心部から側方に向かっていたため、この動きはsymplecticなメタクロナルウェーブであると言える。 球体に繊毛を生やした先行研究の遊泳シミュレーション(Omori et al., 2020, PNAS)と、前年度に得られた精子束・無性群体の遊泳のデータを比較した。鞭毛長で規格化した体長は精子束と無性群体とでほとんど変わらなかった一方、鞭毛長と鞭毛運動の周期で規格化した遊泳速さは精子束で1.8、無性群体で0.3となり、いずれの値もおおむねOmori et al. (2020) のシミュレーションから導かれる値の範囲内であったが、6倍の差があった。この大きな差は精子束と無性群体における鞭毛の分布の違いによると考えられた。 以上の結果を論文にまとめ、近日中に投稿予定である。
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