2022 Fiscal Year Research-status Report
癌を標的とした T 細胞免疫機能に対する細胞代謝における老化因子の役割の解明
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21K20670
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森 真弓 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (70710060)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | がん免疫 / 免疫老化 / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、癌を標的とした免疫細胞における老化因子または抗老化因子を同定し、特にT細胞免疫による癌除去機能に関与するような細胞代謝を司る因子の影響を明らかにすることである。 前年度は、抗原特異的なT細胞活性における代謝経路の影響を調べるため、OT-IまたはOT-II TCRトランスジェニックマウス脾臓からT細胞を単離し、各々のTCR特異抗原ペプチド等を用いて刺激した。同時に代謝関連薬剤で処理し、PD1やCD153などの老化指標を比較した。その結果、様々な代謝経路に関わる重要な因子として、まずビタミンDに着目した。本年度はこの結果についてOT-I TCRを持つCD8T細胞に着目してさらに解析することにした。ビタミンDによるOT-I T細胞の抗原反応や細胞増殖・細胞の生存について再現性を確認し、フローサイトメトリーにより表面抗原として老化指標となるPD1やCD153の変化を調べた。またさらに、このT細胞からRNAを抽出し、QPCRによって老化と関わる細胞周期調節因子などの発現を定量的に調べた。 一方、マウス生体実験では、癌抗原特異的なT細胞免疫に対するビタミンDの影響を評価するため、特異抗原を発現するマウス癌細胞株EG7をLy5.1(CD45.1+)マウスに皮下移植し、同時にOT-I T細胞を尾静注して癌を認識させた。培養中のEG7癌細胞の増殖や生存はビタミンDにより直接影響を受けることがわかったため、癌移植マウスにビタミン投与する代わりに、OT-I T細胞をトランスジェニックマウスから単離して培養中にビタミンD処理したものとしていないもので比較解析した。移植癌細胞の増殖とその抑制を、腫瘍体積や重量、癌組織に浸潤したOT-I T細胞数を基準として評価した。移植に成功したマウスは3~5匹と少ないが、ビタミンDを与えたT細胞はそうでない細胞と同等かそれ以上に癌を縮小させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
トランスジェニックマウスから単離したT細胞を用いた培養実験は、おおむね予定通りに進行したと言える。一方で、生体マウスに癌細胞を皮下移植し、さらにその抗原を認識するT細胞を移植する実験では、本年度から研究機関を移動したことにともないマウスを凍結胚により移動させて実験の中断があったことに加え、年末からは産前産後休暇や育児休暇を取得したため、さらなる実験の中断があった。 生体マウスの実験に着手はできていたため、細胞数などの条件検討は終えており、再現実験や追加解析が今後必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
トランスジェニックマウスから単離したT細胞を用いた培養実験に関しては、OT-II CD4T細胞よりもOT-I CD8T細胞の方が実験系が細胞の共培養とならず単離細胞のみに薬剤などを処理するためシンプルで、再現性も確認された。このため、今後の実験はOT-I CD8T細胞を中心とする。また、前年度は様々な薬剤を用いて、このT細胞培養における影響を調べたが、これらを癌移植した生体マウスに投与すると移植癌細胞自体やマウス自身への副次的影響が無視できない。そこで培養中のT細胞に薬剤処理したものを癌移植マウスに移植することにした。現在注目しているビタミンD以外の薬剤の多くは、培養T細胞の生存率を下げてしまうため、貴重なマウスを用いた生体実験においては「特異抗原を発現するEG7癌細胞を移植したマウスに、ビタミンD処理有り・無しそれぞれの条件下で培養したOT-I CD8T細胞を移植して癌細胞への反応や除去を調べる」ことを最優先実験とする。
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Causes of Carryover |
実験中断があった期間の分の実験を、延長により次年度に行うという計画変更があったため、その実験にかかる費用は未使用額となった。次年度の主な実験は、癌細胞移植マウスへの単離T細胞移植である。T細胞を単離するための試薬や、癌細胞・T細胞を培養するための培地、移植にかかる実験器具や移植後の免疫学的解析に使用する抗体などの試薬を、新たな費用として計算しており、現在の残額でこれら消耗品を購入できる見込みである。また、研究成果によって、残額の予算内で参加できる学会があれば発表などを検討している。
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