2021 Fiscal Year Research-status Report
Relations between cell population dynamics in non-stationary environment and generation time fluctuation
Project/Area Number |
21K20672
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野添 嵩 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任助教 (30910533)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞系譜 / 表現型ゆらぎ / 有限集団 / 個体群動態 / 1細胞計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
1細胞レベルの成長動態と多数の細胞集団の動態を接続する理論的な枠組みの構築を目指し、本研究課題では変動環境下における集団動態と1細胞レベルの世代時間ゆらぎの関係性を明らかにする。世代時間とは分裂から次の分裂までの時間間隔として定義され、1細胞の表現型として測定可能かつ集団動態を考える上でも重要な定量的形質である。定常環境下での世代時間分布と集団増殖率の関係については、集団サイズ無限大で一定の増殖率で増えるという理想極限で成立する関係式が知られているが、生物学的、生態学的に興味深いのは時間変動する環境下での有限集団の動態である。 そこで本年度はまず有限集団の定常データに適用可能な既存の手法の妥当性及び限界を確認するため、定常性を仮定して短期の世代時間分布からの集団の長期増殖率の推定を数値シミュレーションで生成したデータと既存の実験データに対して実施した。また集団サイズの有限性を考慮した集団増殖率の補正方法を見出し、数値シミュレーションによる検証を行った。さらに細胞の排除や死亡を含む系譜における世代時間の確率分布と集団の増殖動態を接続する関係式を理論的に導出し、理論モデルや数値シミュレーションによって有限集団データに適用することの有用性を確認した。 これまでのマイクロ流体デバイスを用いた細胞時系列の長期計測においてはデバイスの形状に基づき妥当な仮定をおいて解析を行う必要があったが、今回の成果はより一般性の高い方法論を示唆し、非定常環境下の細胞集団動態への応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有限集団の世代時間ゆらぎと集団増殖率の関係に関して理論的な進展があり、現実のデータ解析においても有用な結果が得られ、変動環境下でのデータ解析への応用も期待されるため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果の非定常環境下の集団動態への応用は次年度の課題であり、まずはシミュレーションによる検証を行う。 並行して変動環境下の有限集団の長期計測実験の準備を進め、実際に取得した実験データへの応用を目指す。
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Causes of Carryover |
COVID-19の流行状況に鑑み、研究の打ち合わせのための海外出張が実施できなかったため旅費計上分が未使用であったこと、および論文出版が年度内に間に合わなかったことが、次年度への繰越となった主要な理由である。 次年度は長期計測実験の実施および画像解析に必要な消耗品のほか、研究成果発表のための国内外出張費および論文出版費用として使用する予定である。
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