2022 Fiscal Year Annual Research Report
カジリムシ目昆虫における外部寄生性の進化に伴う形態変化の解明
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21K20677
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
島田 潤 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, アソシエイトフェロー (00910259)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | チャタテムシ / 小型化 / 単純化 / 形態進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
【3Dモデルの作成】北海道と東京においてサンプリング調査を行い、実験に用いるチャタテムシを採取した。前年にサンプリングしたものも含め、サンプリングした試料から観察用標本を作成し、SPring-8にてμCTによる解析を行った。解析したデータから3次元モデルを制作し、構造の比較に用いた。 【構造の比較】コナチャタテ科における小型化・単純化した形態に着目して、コナチャタテ科と他のチャタテムシ類の比較を行った。 その結果としてまず目の構造の変化が明らかとなった。コナチャタテ科以外のチャタテムシ類の目の位置は頭の後方についており、視野の確保に貢献していることが考えられるが、コナチャタテ科では目の位置が前方に移動している。さらに複眼の個数が大幅に減少しており、視神経もかなり小さくなってしまっているため視力の低下が起きていると考えられる。また単眼も退化してしまっており、小型化の代償として視覚を犠牲にしている可能性がある。 次に頭の角度が変わったことによる形態変化が明らかとなった。頭部と胸部をつないでいる首の部分が頭の後方に移動していて、それにより食道の角度が緩やかになっている。また食道を開く筋肉が小さくなっており、口に入ったものがよりスムーズに体内に取り込むことができるようになっていると考えられる。食堂を開く筋肉が小さくなったことで、より扁平な形態を可能にしていることが想定された。 逆に顎の筋肉や脳の大きさは相対的に小型化していないことが明らかとなった。 【意義、重要性】本研究ではカジリムシ目昆虫のチャタテムシ類からシラミ類への進化過程のコナチャタテ科の段階にみられる小型化や単純化を明らかにした。今後はコナチャタテ科からシラミ類へ寄生性を得るという進化する過程において必要だった形態の変化を正確に議論することができるようになる。シラミ類の形態解析についても今後解析していく予定である。
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