2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidating the neural basis of sensory-motor transformation by mapping information representation and causality in the rodent cerebral cortex
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21K20684
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
川端 政則 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (00907727)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 感覚・運動情報処理 / 大脳皮質 / 電気生理学 / 心理物理学 / 光遺伝学 / デコーディング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、視覚性二段階応答課題を遂行中のラットの大脳皮質を中心とした広範囲な脳部位から電気生理学的手法を用いて神経活動記録を行うことで、感覚・運動変換の神経回路メカニズムを探ることを目的とする。視覚性二段階応答課題では、ラットが自発的に右レバーを押すことで試行が始まり、そのまま一定時間ホールドすると目の前のモニターに市松模様の視覚刺激が提示され、その刺激に応答して600 ms以内にレバーを手前まで引くと成功となり報酬が与えられる。この時、刺激の強度(模様のコントラスト)を動物の反応率が50%となるように調節することで、物理的に同じ刺激に対して反応する試行としない試行を共存させることが可能となる。刺激に応答しなかった場合は、そのままホールドを継続すると1500 ms後に強い刺激が再度提示され、こちらに応答しても同様に報酬が与えられる。 2021年度は、視覚性二段階応答課題を確立した上で、視覚刺激の方向が左のみ・右のみ・左右ランダムの3種類のブロックが数十試行ごとに入れ替わるブロック制を導入した。これによって動物の空間的注意を誘導したり、視覚関連ニューロンの左右選好性を調べたりすることが可能となった。さらに、課題遂行中の神経活動記録も安定的に行うプロトコールを確立した。1日に3部位から同時記録を行い、1ラットにつき平均20セッション記録を行うことができており、既に複数頭の記録が終了している。 記録した神経活動に対してデコーディングなどの解析手法を適用したところ、V1からPPCにかけて感覚性優位から運動性優位へ徐々に変化していることが明らかになった。また、V1の視覚関連ニューロンは刺激に応答しなかった場合でも応答した場合と同様に活動していることが観測されたことから、応答の成否はV1より下流の情報処理において決まっていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規行動課題である視覚性二段階応答課題を確立し、神経活動記録も複数個体において終了した。 当初の狙い通り、視覚刺激の提示を2段階にした上でホールド時間が長い試行を一定割合混ぜることで、1回目の刺激提示に対しては偽陽性応答が少なくなり刺激性応答と予測性応答の分離を実現できた。さらに、動物の動機付けや注意の変化を捉えられるようにブロック制を導入するといった工夫を加えた。 神経活動の解析に関しては、申請者がこれまで開発してきたPhase-Scaling analysisに加えてROC解析をベースとした感覚・運動情報のデコーディングを適用することで、V1からPPCにかけて感覚性から運動性へ徐々に情報表現が変化している様子を捉えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の成果から、V1からPPCの間に存在する高次視覚野V2において後方部から前方部にかけて感覚性から運動性へ情報表現が大きく変化していることが明らかになったため、2022年度は光遺伝学的手法を用いてV2の活動操作を行った時の動物の行動や周辺領域の活動の変化を調べる。 これまでに行なった予備実験では、V2の光操作によって50%強度の視覚刺激に対する応答率の変化を確認できたものの、光操作時の光刺激が漏れたために動物の行動が変化した可能性を否定できなかった。この問題は、例えばコントロールとしてGFPを発現させた動物に対して光操作を行なって行動が変化しなかったとしても、光刺激に対して強化が生じなかったと解釈するとコントロールとして不適切なため解決できない。そこで、ChR2またはeArchTを発現させた脳部位とインタクトな脳部位の2箇所をそれぞれ光刺激することで、同じ動物の同じセッション内で操作条件とコントロール条件を共存させることを考えた。この手法を用いることで感覚・運動情報処理に果たすV2の役割を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初の計画通り高密度多点電極(Neuroupixel)の制御装置を購入したが、半導体不足等が原因となって想定外に納期が長くなり年度内に納入可能な物品に調整したために次年度使用額が生じた。次年度の早い段階で残りの物品を購入する予定である。
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