2021 Fiscal Year Research-status Report
Physiological role of long-lasting suppression of noradrenergic neurons in the locus coeruleus induced by prostaglandin E2
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21K20688
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
向井 康敬 名古屋大学, 環境医学研究所, 特任助教 (30908124)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 青斑核ノルアドレナリン神経 / プロスタグランジンE2 / ストレス / うつ様状態 / EP3受容体 / 神経活動修飾 / 尾懸垂試験 / 神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ストレスを受けた時、数時間~数日間「調子の悪さ」を経験することがある。この原因は、数時間~数日間にだけ生じる「長期的な神経活動の変化」ではないだろうか? 研究代表者はこれまでに、マウス脳スライス標本にストレス関連物質であるプロスタグランジンE2(PGE2)を2分間投与すると、注意覚醒の惹起に重要な青斑核ノルアドレナリン神経(LC-NA神経)の活動が60分間以上持続して抑制されることを発見した。この時間スケールの対比は、ストレスおよびその受容後の「調子の悪さ」と類似している。そこで本研究は、PGE2によるLC-NA神経活動の長期的な抑制が、どのような行動惹起に重要であるか解明を目指している。 本年度は、主に行動実験を行った。ノルアドレナリン輸送体(NAT)プロモーター下流でノルアドレナリン(NA)神経特異的に組み換え酵素Creを発現するNAT-Creマウス系統と、抑制性のプロスタグランジンE2受容体であるEP3受容体(EP3R)をCre依存的にノックアウト可能なEP3R-floxマウス系統を交配し、NA神経特異的なEP3Rノックアウトマウス(cKOマウス)を作出した。さらに、社会的孤立ストレス・社会的敗北ストレス・拘束ストレスの3種類のストレス負荷、およびうつ様状態を調べる行動実験である尾懸垂試験の、各実験環境を整備した。そして、cKOマウス、および同腹の野生型(WT)マウスを用いて、3種類のストレスのいずれかを負荷した後、尾懸垂試験を行い、うつ様状態の程度の指標である不動時間を測定した。その結果、拘束ストレス負荷後に、cKOマウスの不動時間がWTマウスの不動時間よりも増大する傾向を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、様々なストレス負荷実験とその行動への影響を解析する実験環境を整備できた。そして実際に行動実験を行い、NA神経特異的にPGE2の受容体EP3RをノックアウトしたcKOマウスにおいて、PGE2の関与する可能性のあるストレスとストレス負荷後の行動を見出すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、cKOマウスとWTマウスを用いて、ストレス負荷後の他の行動についても、差の生じる行動があるかどうか検討する。また、cKOマウスで増加した不動時間が、実際にPGE2によるLC-NA神経の長期的な抑制の有無に起因するかどうかを調べるため、化学遺伝学的手法により人為的にLC-NA神経活動を抑制した条件で、尾懸垂試験を試みる。
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Causes of Carryover |
研究室の補助によりマウス飼育に必要な経費などの一部を削減できた。また新型コロナウイルス感染症の影響で参加学会がオンラインとなるなどしたため、確保していた予算を使用し切れなかった。次年度使用額については、行動実験の精度向上に用いる他、昨今の円安等による物価上昇に応じて当初の予定より多額の出費が見込まれることから、次年度に全て使用予定である。
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Research Products
(5 results)