2021 Fiscal Year Research-status Report
パーキンソン病でのセレンホメオスタシス撹乱におけるセレノプロテインPの役割の解明
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21K20707
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
星 尚志 東北大学, 薬学研究科, 助手 (20907993)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | パーキンソン病 / セレノプロテインP / 神経変性疾患 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、パーキンソン病(PD)病態における血漿セレン含有タンパク質“セレノプロテインP(SeP)”の役割を分子レベルで明らかにすることを目指している。申請者の研究から、酸化ストレス誘導剤によって細胞に取り込まれたSePが不溶化することを見出し、PD病態形成との関連が示唆されており、培養細胞系およびマウスを用いて解析を行う。 ヒト神経芽腫由来細胞株であるSH-SY5Y細胞を水溶性/脂溶性の酸化ストレス誘導剤や小胞体ストレス誘導剤などで処理した結果、脂溶性の酸化ストレス誘導剤によってSePの不溶化が認められた。また、この凝集体はαシヌクレインの免疫染色像と一致していた。続いて、細胞にαシヌクレインプラスミドをトランスフェクションし、高発現させた条件での検討を行ったものの、発現効率の低さから詳細な検討が出来なかった。そこで、αシヌクレインの線維化物であるαSyn fibrilを細胞にプロテイントランスフェクションする系を構築し、SePを添加したところ、SePとαSyn fibrilが共局在することが見出された。さらに本条件下において、αSyn fibrilの凝集体形成が増加していることを発見した。また、SePと同様の細胞内へのセレン供給能を持つ亜セレン酸処理によっても、αSyn fibril凝集体形成が増加していた。これらの事実から、細胞内のセレン濃度が高まることで、αSyn fibril形成が促進される可能性が示唆された。今後は、薬剤誘導性αSyn発現細胞を樹立し、αシヌクレインのモノマーを高発現させ、SePが細胞内での凝集形成を誘導するか検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞レベルの検討によって、どのようなストレス存在化でSePが凝集するか詳細に検討できた。さらに、αSyn fibrilのプロテイントランスフェクションの実験系を構築し、αSyn凝集形成の評価系を構築できた。本実験系を用いてαSyn凝集形成にはSePおよび細胞内セレン濃度が関与することが示唆された。以上から、予定通り研究が進行し、今後の解析に繋げられると考えた。したがって、(2)おおむね順調に進展している。と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、セレン濃度増加に伴うαSyn fibril凝集形成機構の解明を目指して解析を進める。これまでの検討から、SePによるαSyn fibril凝集形成には細胞内でのタンパク質分解機構のかく乱が関与する可能性が示唆されているため、それら毛色を中心に検討を進めたい。また、セレンは種々の化学形態で細胞内へと取り込まれることが知られているため、亜セレン酸以外のセレン供与体を用いて、セレン形態とαSyn fibril凝集との関連を詳細に検討する。 マウスを用いた検討では、SeP欠損マウスにαSyn fibrilやパーキンソン病を誘導する薬物を投与し、パーキンソン病病態形成にSePが関与するか調べる。また、マウス脳へのαSyn fibril微量投与モデルを確立し、Sepが脳内でのαSyn伝播に関与するか検討する。
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Causes of Carryover |
3月に日本薬学会に参加予定であったが、コロナウイルスの影響により現地参加ができなくなったため。
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