2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K20712
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
渡邉 正悟 静岡県立大学, 薬学部, 研究支援者 (50911335)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 天然物合成 / quassinoid / 2-ピロン / Diels-Alder反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、創薬研究への貢献を目的として、抗腫瘍活性や抗炎症活性、抗マラリア活性といった様々な生物活性を発揮するquassinoidに注目し、これらの類縁体を自在に合成可能な新規合成手法の開発を目指している。高度に酸化された縮環構造をいかに構築するかが最重要課題の1つであり、我々は2-ピロンを使った分子内環化/転位反応を連続的に行うことで本課題を解決する計画を立案した。また、本連続反応では、高度に酸化された基質を水溶媒中で反応させた場合における立体選択性の制御にも注目している。これは、quassinoid類縁体の合成だけでなく、高度に酸化された複雑天然物の合成方法論の確立にも貢献し得る点で重要な課題である。 これまでに、研究計画に従って分子内に2-ピロンを含む連続反応前駆体の合成を検討した。その結果、はじめに、o-vanillinから合成したキノンと1,3-butadieneとの分子間Diels-Alder反応を経てA環セグメントの炭素骨格を構築することに成功した。しかしながら、得られたシスデカリン化合物の縮環部位をエピメリ化させて望みのトランスデカリン化合物に収束させることが困難であるとわかった。種々の塩基性条件や、基質の誘導体化を含めた変換を試みたが、トランス体をメジャーで得ることができなかった。そこで、有機塩基を用いる条件で得られた約1:1のジアステレオ混合物を起点として、2-ピロンセグメントの導入と連続反応によるquassinoid骨格の構築を目指すこととし、現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していた立体化学の制御が期待通りには進行せず、種々の条件や合成ルートを検討することに時間を要した。しかしながら、それでもなお、望みの立体化学に収束させることができておらず、また、得られた二種類のジアステレオ混合物を分離することも困難であった。そこで、それらの混合物のまま合成を進めることとした。幸い、各ジアステレオマーにおいて、その後の変換反応が高立体選択的に進行し、これ以上に複雑な混合物を与えることなく進めることができている。また、少なくとも二種類の混合物であることから、スペクトル解析なども慎重に行う必要があることも進捗が遅延した一因である。
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Strategy for Future Research Activity |
当面は、現在得られているジアステレオ混合物のまま合成を進める。鍵となる連続反応が進行するかどうか、およびその際の立体制御がどうなるかが最も重要であり、その結果を精査した後に合成ルートを見直す予定である。
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Causes of Carryover |
研究拠点の移動に伴って、当初購入を予定していた機材やガラス器具などの入手が急務ではなくなったため。また、参加した学会等も、当初対面で実施予定だったものがオンライン開催に切り替わり、旅費の申請が必要なくなったため。 今後は、現在の研究環境に合わせて別途必要と思われる周辺機器や器具類を購入するために研究費が必要となる。また、これまでに使用した消耗品や共通試薬などを今後補充する必要があるため、研究継続に当該助成金を使用する。
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