2021 Fiscal Year Research-status Report
RNA editing with membrane-permeable guide RNA
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21K20713
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
秤谷 隼世 名古屋大学, 理学研究科, 研究員 (10890618)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 核酸化学 / 核酸DDS / ジスルフィド / 核酸医薬 / RNA編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、細胞膜をintactで直接透過するガイドRNAをデザイン・合成し、これによりRNA編集を達成することである。本目的を達成するための初年度マイルストン通り、今年度は①細胞膜透過性ユニットの化学合成、②そのユニットを結合したオリゴRNAの化学合成、③以上から得られたオリゴRNAの細胞膜透過性の評価 を行った。
①:所属する研究室が取り組んできた先行研究の知見をもとに、細胞膜の直接透過を促進するようなジスルフィド構造の最適化に取り組んだ。その結果、環状ジスルフィド構造を核酸に付与できるような合成原料アミダイト2種類(直接修飾型・ポスト修飾型)の合成に成功した。 ②:得られた2種類のアミダイト原料を用い、核酸自動合成機によって複数種類のRNAオリゴ核酸を合成した。直接修飾型による合成ではやや合成収率が低下したものの、細胞実験に十分な量のオリゴRNAの合成に成功した。ポスト修飾型による合成では、脱保護条件を最適化することにより、核酸自動合成機でアミノ基を有するユニットを付与したのちにNHSエステル反応を経ることでオリゴRNAにジスルフィド構造を付与することができた。 ③:ユニットを有するオリゴRNAの3’末端に蛍光プローブを導入した配列を設計・合成し、フローサイトメーターによる細胞内取り込み評価を行った。その結果、ポスト修飾型のユニット構造を有する修飾オリゴRNAでは、コントロール配列と比較して3-5倍程度の蛍光強度が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における初年度のマイルストンとして、複数種類のジスルフィド修飾オリゴRNAの合成に成功し、その細胞膜透過性を見出すことを予定していた。これまで、予定していた進捗で実験を遂行できており、かつ、細胞膜透過性を有するジスルフィドユニットを1つ(ポスト修飾型)見出すことに成功している。当初は、リポフェクションによる細胞導入と比較して劣らない程度の構造を発見することを目標としていたが、実際に見出された構造の膜透過性は、フローサイトメーターの蛍光強度にしてリポフェクションの半分程度であった。それでもコントロール配列と比較して3-5倍の取り込み活性が確認されたため、当初の目標はこれまでのところ概ね順調に達成できていると評価した。
しかしながら、次年度のマイルストンに向けたRNA編集を評価する予備的実験において、報告のあるガイドRNAをデザインしてリポフェクションによる細胞導入を行っても、サンガーシーケンシングにおいて標的のRNA編集が観察されなかった。本研究の全体目標を達成するためには評価系の最適化が必要と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後(最終年度)は、得られた構造を付与した独自の細胞膜透過性ガイドRNAを合成し、そのRNA編集効率を評価する予定である。予備的実験において望ましいRNA編集効率の評価系を確立することを当面の目標とする。当研究室ではRNA編集の知見を有しておらず、必要に応じて国内外のRNA編集を専門とする研究者のもとで指導いただくなどする所存である。 評価系の確立後、まず初年度に見出した新たなジスルフィドユニットを用い、膜透過性を付与したガイドRNAを複数種類合成する。ここで合成するガイドRNA配列は、細胞内に広範に発現しているようなハウスキーピング遺伝子(GAPDH, β-Actin)の3’-UTR領域を標的とする。 この際、ガイドRNAの長さを検討できるよう、20塩基から60塩基程度のガイドRNAを合成する(化学合成が無理なく可能な長さ)。
そして、合成したガイドRNAと、ADAR1(RNA編集酵素)をコードしたプラスミドをHeLa細胞に対してコトランスフェクション導入し、そのRNA編集効率を、サンガーシーケンシングによって評価する。編集が確認できれば、同じ遺伝子の翻訳領域(CDS)を標的とした編集効率の評価も行う。さらに、HeLa細胞にはごく微量のADAR1が発現していることが知られているため、ADAR1のプラスミド導入なしで(つまり、合成したガイドRNA単体で)RNA編集が起こるかどうかを検討する。これにより、細胞毒性の高い脂質性ナノ粒子を用いることなしに、標的に対してRNA編集を起こすことが可能となるかもしれない。 最終的にはハーラー症候群や、α-1アンチトリプシン欠損症といった疾病の治療を視野に入れた標的mRNAの編集効率を評価する。
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Causes of Carryover |
当初予定していたよりも合成に成功した核酸原料の数が少なくなってしまったことから、化学合成関連の試薬・消耗品で一部予定よりも経費計上が少なくなった。一方、細胞実験に関連する予備実験の結果を受け、今後は生物系の実験で多くの条件検討を強いられることが見込まれるので、今年度使用しなかった分を次年度使用額として用いる。また、同様の理由から、国内外の研究者のもとでRNA編集にかかる実験・評価条件のディスカッションをする必要も想定し、旅費としても次年度計上する。 なお、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、参加予定であった学会がオンライン開催であったため、旅費・印刷費で計上していた経費が未使用となった。次年度は現地開催予定している学会にも参加申し込みしており、その旅費として次年度使用額が生じる。
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