2022 Fiscal Year Annual Research Report
ノンターゲットリピドミクスによる腸内細菌が産生する心不全抑制性代謝物の探索
Project/Area Number |
21K20730
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
安田 柊 北里大学, 薬学部, 助教 (90824483)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 腸内細菌 / リピドミクス / 脂質酸化 / 細胞死 / GPx4 / 心不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
GPx4は生体膜に生じた酸化リン脂質を還元する酵素である。申請者らは、心臓特異的GPx4欠損マウスにおいて餌のビタミンE量を低下させると約15日で脂質酸化依存的な心突然死を引き起こすこと、この脂質酸化依存的な心不全は特定の抗生剤の飲水投与により完全に抑制できること、そのメカニズムとして抗生剤耐性の腸内細菌の増加によることまで明らかにしていた。しかし、一方申請者は、これまでに全く明らかにされていなかった腸内細菌叢由来脂溶性代謝物を網羅的に検出・同定するノンターゲットリピドミクス解析法を樹立し報告してきた。 申請者は、心臓特異的GPx4欠損マウスの心臓・血漿・盲腸内容物のノンターゲットリピドミクスを行うことで、脂質酸化依存的な心不全を抑制する腸内細菌の代謝物の同定を試みた。その中で、抗生剤を投与することで、腸内細菌依存的な代謝物が大きく変動することを見出した。 また申請者らは、この抗生剤による心不全抑制には少量のビタミンE摂取が必要であることを明らかにしている。そこで、心不全が抑制されないビタミンE欠損食マウスと心不全が抑制されるビタミンE少量含有食マウスのノンターゲットリピドミクスを行ない、心不全を抑制する代謝物のさらなる絞り込みを行った。その結果、心不全を抑制するマウスにおいて心臓や血漿で特定の脂肪酸やリン脂質、極性の低い脂質群が増加していたことや盲腸内容物にて一部の胆汁酸やリン脂質が増加していたことが明らかとなった。 これらの結果より、今回同定された脂肪酸や中性脂質が脂質酸化ストレスを軽減する可能性や胆汁酸やリン脂質によってビタミンEの体内への吸収が制御される可能性が見出された。今後はこれらの代謝物を直接投与することによって心不全を抑制できるのか検証を行い、代謝物による心不全予防のメカニズムを確かめていきたい。
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