2021 Fiscal Year Research-status Report
BBTB標的創薬に有用な生体模倣性新規in vitroヒトBBTBモデルの樹立
Project/Area Number |
21K20731
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
森尾 花恵 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (70908524)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | グリオーマ / 脳腫瘍血管バリア / in vitroヒトBBTBモデル / ヒト不死化脳細胞 / 階層型スフェロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度の計画概要として掲げていたもののうち、“ヒト脳腫瘍血管バリア (BBTB) モデルの構築及びそのBBTB特性解析”に注力して研究を遂行してきた。 本研究の予備検討として、本研究室で樹立したヒト不死化脳毛血管内皮細胞HBMECがグリオーマ細胞塊を覆うようなBBTBモデルのプロトタイプを構築してきたが、HBMECがグリオーマ細胞塊表面を全体的に均一に被覆できる確率が低いのが問題であった。これに対しBBTBを構成する細胞として当研究室で樹立したヒト不死化アストロサイトHASTRを加えた上でBBTBモデルの構築法の検討を行った。その結果、メチルセルロースを用いた培養法を用いてグリオーマ細胞をスフェロイドの中心に、そしてその周りをアストロサイトで覆うような形態でBBTBモデルの核となるスフェロイドの構築が可能となることを明らかとした。これまでの検討から、現時点で有望な方法を2つ見出すことができている。また、各細胞の細胞数及びその比率が細胞局在等に影響を与えることが明らかとなっており、着実にBBTBモデル樹立への手がかりを掴んでいる。 同時に、BBTBモデルの構成細胞として当研究室で樹立した不死化細胞の有用性について明らかとするため、3種のヒト不死化脳細胞及びグリオーマ細胞を用いて2次元型のBBTBモデルを構築し、バリア機能及びHBMECにおける遺伝子発現解析を行った。その結果、排泄トランスポーター遺伝子発現量の変動を例としてin vivoにおけるBBTBに関する報告と一致するような結果も認められ、構築における使用細胞の有用性を明らかとすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度の計画概要として “ヒトBBTBモデルの構築及びそのBBTB特性解析” 及び“in vivoモデルと患者検体を用いたBBTB特性解析”の二つを掲げていたが、現段階では後者に手を付けられておらず、前者に注力して研究を遂行している状況である。 研究に取りくみ始めた当初、最も単純な系としてHBMECがグリオーマ細胞塊を覆うようなBBTBモデルの構築を目指しており、それに用いる培養デバイスやグリオーマ細胞の種類、培地組成や細胞比等の条件検討を行っていた。しかし、見た目からしても安定してHBMECがグリオーマ細胞塊の周囲を全体的に均一に被覆できる培養条件を見つけることができず、その検討に予想以上に時間がかかってしまった。 その後、アストロサイトやペリサイトといったヒト生体において本来BBTBを構成している脳細胞を構成細胞として入れる必要性を感じ、HASTRを加えたヒトBBTBモデルの構築に取り掛かることにしたが、その取り組みにも予想以上の時間がかかってしまった。グリオーマ細胞塊をHASTRで包み込む方法について外部研究協力者に相談し、その研究室で見出された独自の培養法をモデル構築に採用するための検討を行った。しかし、技術移管の時点で思うように行かない期間が長きに至ってしまい、予想以上に困難を強いられることとなった。現在ではその培養法を用いるにあたり必要な手技や知識等をほぼ取得することができたとともに、他の培養法を用いた構築についても同時に検討を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
ペリサイトは生体において血液脳関門BBBがその機能を発揮するにあたり重要な役割を果たしていることが知られているとともに、これまでヒトBBBモデルの樹立を行ってきた経験上、アストロサイトと脳毛細血管内皮細胞間の接着にはペリサイトが仲介することは重要であることが分かっている。以上より、現在はHASTRをHBMECとグリオーマに加えてBBTBモデルの構成を試みているが、状況に応じてそこにさらに当研究室で樹立したヒト不死化ペリサイトHBPCも加えたモデルの構築も試みる予定である。ここまでグリオーマ細胞塊をアストロサイトで包みこむところまで成功していることから、そこにペリサイト、脳毛細血管内皮細胞を播種する(これまでの階層型BBBモデルを樹立してきた経験を活かす)ことで階層型スフェロイドの構築が可能であると期待している。 また、本研究では生体模倣性を伴った高機能性を期待し、3D(階層型スフェロイド)モデルとしてのヒトBBTBモデルの樹立に取り組んでいる。しかし、3Dはおろか2Dレベルでも創薬現場に導入されるに至っているヒトBBTBモデルは存在していないのが現状である。このことから、計画概要に従って階層型スフェロイドモデルとしてのBBTBモデルの樹立に引き続き取り組んでいくことはもちろんのこと、それと同時にトランスウェル型モデル(2D)としてのBBTBモデルの樹立にも取り組んでいくことも考えている。
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