2021 Fiscal Year Research-status Report
亜鉛錯体を用いたインスリン抵抗性改善効果・糖尿病の発症予防効果へのチャレンジ
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21K20734
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
内藤 行喜 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (80610120)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 亜鉛錯体 / 終末糖化産物(AGEs) / 糖尿病 / アルドース還元酵素 / 高血糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
亜鉛ヒノキチオール錯体([Zn(hkt)2])をはじめとする種々の亜鉛(Zn)錯体による終末糖化産物(AGEs)の生成抑制効果について検討することを目的に、研究を行った。 今年度は、①研究に使用するZn錯体の合成を行った。具体的には、Zn-L-アスコルビン酸錯体([Zn(Vc)2])、Zn-N-アセチル-L-システイン錯体([Zn(NAC)])、Zn-L-カルニチン錯体([Zn(car)])、[Zn(hkt)2]の合成を行い、種々の分析方法により合成が完了したことを確かめた。②糖代謝中間体に由来するグリセルアルデヒドと血清アルブミンを反応させ、TAGE(グリセルアルデヒド由来AGEs)の生成抑制効果を比色吸光度測定法により測定した。③Zn錯体によるポリオール代謝経路に関与するアルドース還元酵素(AR)への阻害活性の評価を行った。④健常マウスへAGEsを腹腔内投与した糖化ストレスモデルマウスを作成し、in vivoでのAGEs生成抑制効果の検討を行った。 これらの評価から、比色吸光度測定法を用いたTAGE生成量の検討では特徴的なピーク変動が見られる波長があったが、被験物質に由来するピーク変動と重なる部分があり、正確なAGEs生成抑制効果を評価しにくい方法であることが分かった。AR阻害活性評価については、水溶性のZn錯体を中心に検討を行い、水溶性のZn錯体ではイオン型Zn化合物である硫酸亜鉛と比較して強い酵素阻害活性は認められず、水溶性Zn錯体はARに対する直接的な酵素阻害作用を有さないと考えられる。予定している糖尿病モデルマウスを用いた亜鉛錯体投与実験の予備検討として、健常のC57BL/6Jマウス(雄性8週齢)に対して、AGEsおよび[Zn(hkt)2]を1か月間連続腹腔内投与した時の血中AGEs濃度の変動、肝臓、腎臓、眼球への組織形態的変化を組織染色により評価を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
比色吸光度測定法によるAGEs生成量測定については、被験物質により測定波長を個別に設定する必要性があると考えられるので、この方法によるAGEs定量実験は一旦中止することとした。AR阻害活性について、より阻害効果が高いZn錯体を探索するため、脂溶性亜鉛錯体についても評価できる実験系を構築し、検討を進める予定である。 また、2022年度に動物実験を計画しており、この時に糖尿病モデルKK-Ayマウスを用いて糖尿病発症抑制効果を評価する予定であったが、AGEsとの関連を評価するにはストレプトゾシン(STZ)誘導糖尿病マウスを用いた検討の方がより変化が顕著になることが分かってきたため、2022年度はKK-AyマウスからSTZ糖尿病モデルマウスに変更して研究を実施することとした。いずれの場合も、前段階として健常C57BL/6Jマウスを用いた予備的検討が必要であるため、AGEsと[Zn(hkt)2]を併用腹腔内投与を行った2021年度の動物実験を基に、血漿中AGEs量の定量、肝臓中のフルクトース量し、今年度の動物実験に繋げていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
比色吸光度法によるTAGE生成量の検討では、より効率的な評価方法を構築することを目標に、継続的にTAGE生成量の検討を行っていく予定である。AR阻害活性については、生体においては投与したZn錯体は、一部がZnイオンと配位子に解離する可能性も認められているため、Zn錯体のみの評価に留まらず、配位子についても検討を行う予定である。 動物実験については、AGEsとの関連を評価するにはSTZ誘導糖尿病マウスを用いた検討の方が、より変化が顕著になることが分かってきたため、2022年度は自然発症糖尿病モデルKK-AyマウスからSTZ糖尿病モデルマウスに変更して研究を実施する予定である。高血糖症状により糖尿病性白内障が生じること、また、ポリオール代謝経路に関与するARが腎臓のほか、水晶体にも高発現していることから、組織形態学的評価対象として眼球を追加した。また、組織形態学変化を観察するうえで、組織中のグリコーゲン沈着を確認するため組織固定方法をホルマリン固定、メタカルン固定の2種類で実施する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大防止措置等のため、研究に使用する亜鉛錯体合成以外でのin vitro実験の進捗が、当初計画しているものよりもやや遅れている。このため、酵素実験で用いるARなど高額な試薬購入や、消耗品が予定の購入量に至っておらず次年度使用額が生じた。 2022年度分として、AR阻害活性評価を推進し、酵素阻害作用の強い亜鉛錯体の探索を引き続き行っていく。また、動物実験では2021年度に実施した動物実験の結果を基にし、作製した糖尿病モデル動物から摘出した臓器中のAGEs蓄積状況を抗AGEs抗体を用いて評価し、亜鉛錯体投与による臓器中AGEs蓄積軽減作用や、グリコーゲン沈着抑制作用などを評価していく予定である。
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