2021 Fiscal Year Research-status Report
血管リバースエイジングを目指した血管内皮細胞老化の分子機序の解明
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21K20741
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
射場 智大 金沢大学, 医学系, 博士研究員 (10908205)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 血管内皮細胞 / 老化 / シングルセル解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、老化と共に血管内皮細胞に起こる機能低下や欠損を防ぐことで、心血管系疾患の予防、また治療法を確立することが目標である。 老齢マウス及び若齢マウスの血管内皮細胞について、定常状態と虚血条件下におけるシングルセル解析を行ったこれまでのデータより、老齢マウスでは、若齢マウスに認められた血管内皮細胞の小集団のうち、その存在が大きく減少、あるいは欠損する細胞集団が存在する事を明らかとしてきた。これらの細胞集団を加齢変性内皮細胞とし、加齢変性内皮細胞に起こる変化と、心血管系疾患との相関を明らかとすること、また、加齢変性内皮細胞に起こる変化のメカニズムを解明し、これを抑制することで、老化に伴う心血管系疾患の予防へと繋げられないか研究を進めていく予定である。 本年度は加齢変性内皮細胞の組織内における局在を明らかとすること、また、加齢変性内皮細胞が担う機能をバイオインフォマティクス的手法によって解明する事を目標に研究を行った。組織内における局在を明らかとすることを目的に、加齢変性内皮細胞で特徴的に発現が認められる遺伝子群、所謂マーカー遺伝子の探索を行ったところ、36個の遺伝子について、加齢変性内皮細胞で特異的に発現していることが明らかとなった。これらの遺伝子群の中には細胞表面タンパク質をコードする遺伝子も認められたが、現在までに市販の抗体製品を用いて、有意に加齢変性内皮細胞の分離を行うには至っていない。 また、加齢変性内皮細胞の機能を明らかとすることを目的として、パスウェイ解析並びに転写因子解析を行ったところ、24個の特徴的パスウェイを検出することができた。興味深いことに、検出できたパスウェイについて若齢マウスと老齢マウスで比較を行ったところ、5個のパスウェイについて、老齢マウスで活性が低下していることが明らかとなった。現在、これらのパスウェイについて心血管系疾患との相関を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の当初の到達目標は加齢変性内皮細胞の細胞内局在を明らかにすることであった。現在までに候補因子を36個までに絞り込む事ができており、これらの因子の中から有効な細胞マーカーが同定されることを期待している。また、これまでは細胞表面マーカーの中でも抗体が市販されているものに限り探索を行なってきたが、探索を行いながらin situ hybridization(ISH)の実験系の立ち上げを行なっており、今後はこれを併用しながらマーカー探索が行えるよう環境を整備した。 また、次年度の目標であった加齢変性内皮細胞の機能及び機能低下を明らかとする事については、現在までに加齢変性内皮細胞で特徴的に活性化が認められるパスウェイの同定と、このパスウェイのうち、加齢により活性が低下したものについて同定することができた。 これらのことを踏まえ、今年度はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は引き続き加齢変性内皮細胞の細胞マーカー探索を行う。これは、実際の組織内局在を明らかとする事により、虚血条件からの再生に至って、これらの内皮細胞がどのように寄与しているのか検討するに不可欠な事である。具体的な手法としては、本年度主体として行なっていた細胞表面タンパクを対象とした探索方法に加え、新たに実験系を立ち上げたin situ hybridization(ISH)を用いた手法を用い探索を行う予定である。 また、同定された加齢変性内皮細胞で特徴的に活性化しているパスウェイについて、いずれのパスウェイが血管恒常性の維持に関わっているか、これを明らかとする。具体的には同定されたパスウェイについて、それぞれレンチウイルスを用いた活性亢進、或いはCRISPR-Cas9システムによる機能欠損、また阻害剤などの投与により、虚血条件下からの再生がどのように変化するか検討を行う。特に、老化によって活性が低下することを同定した5つのパスウェイについて着目し、検討を行っていく。
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Causes of Carryover |
実験計画の中で抗体試薬を多分に購入する必要があった。本年度に購入を検討していた抗体試薬について、今年度の予算範囲内で購入できなかったものが一部存在した。そのため、本年度の予算を使い切らず、来年度の予算と合算して購入予定であった抗体試薬を購入すべく、次年度繰越とした。
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